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pdr
紙袋のウサギ/和の文字パレット(荒福)
和の文字パレット(https://twitter.com/needbeen_s/status/505144195518971905/photo/1)使用でリクエストをいただいて書きました。





荒福
 19.白緑/玉兎/焦がれる




 新幹線のアナウンスが次の駅名を告げる。目的の駅までまだ一時間以上ある。何度目になるかわからないメールとラインのチェックをしたがもともと小まめに連絡を取り合う仲ではない。必要な時には確りと連絡をするが大会で会うからと言ってわざわざ今どこに居るなどとは報告しない。解っていながら荒北はもう一度メールの確認をした。
 福富に会うのは数カ月ぶりた。高校を卒業して地元を離れれば、どれだけ親しかったチームメイトとも疎遠になり、メールをすることも減った。筆まめな後輩すら、インターハイを過ぎればほとんど連絡をしてこない。
 先日、新潟で開かれた大会では金城を引いて走った。概ね順調にレースを走り切り、結果は3位だった。慣れない道と、周囲の実力者を思えば十分な結果だった。
 物足りないと感じて居た事を、察しのいい金城は恐らく気付いていた。
 悪ィ、と洩らしてしまった荒北に金城は苦笑で答えた。謝るべきではなかったと今は思う。

 新潟のレースのすぐ後に、昔のチームメイトが何人か出るレースに向かう事に決めた。箱根よりずっと西で開催されるレースに向かう荒北に金城は金銭面でも単位の面でも心配の色を見せたが最後には背を押してくれた。逆の立場だったら荒北も同じようにしただろう。
 薄緑色の袋に入った土産は、新潟を出る時に慌てて買ったものだった。甘いものが好きとはいえ、落雁はさすがに引かれるだろうか、と荒北は眉を寄せた。
 兎を模した菓子が、元チームメイトを思い出し、同時に動物好きである福富を連想して買ってしまったが落雁ほど食べにくい菓子もないだろう。
 表情の変わらない男だが、困惑した顔で礼を言うだろうことが目に浮かぶ。それはそれで、荒北にとっては悪くない。目に優しい色の紙袋を床から膝の上に置く。時速200キロ以上出ている鉄の乗り物さえ遅いと感じて、荒北は目を閉じた。



Aさんリクエストありがとうございました!

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