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pdr
※しろい狂気(モブ東/東御)
どうしてこんなことになったのか東堂尽八はぼんやりとした思考をめぐらせた。

 「あっ、あ、ひぅ、やらっ、あ、あ」
 がくがくと腰が震える。自らの手で慰める何倍にも思える強制的な快感。押し付けられた男根がなすすべもなく口内に入ってくる。
「ん、んぐ、ふ」
 酷い臭いだ。味も、気分はもっと最悪だ。だというのに、同じものを咥え込まされた後ろがもっともっとと喜んでいる。正常ではない。飲まされた違法な薬のせいだ。
「ぁ…っぁああああっ」
 内側に放たれる感触。嫌悪だけだった筈のそれが、いつの間にか体中が痺れる程の快感に変わっていた。
 ずるりと音を立てて抜かれる。腰を支える手と、髪を掴んでいた手が離れ東堂は床に崩れ落ちた。力が入らず、上半身を起こすこともままならない。逃げなくては、拒まなくてはという意思は消えていた。寂しくなった後孔に自身の指を挿し入れ、何度も動かす。見下ろす瞳が嘲笑しているのが解ったが手は止まらなかった。もっと、はやく与えてほしくて見上げれば先程まで乱暴に髪を掴んでいた手が優しく頬を撫でた。否、頬にこびりついた精液を唇に塗っている。舐めろと言外に命令されている。素直に唇を開けばいい子だねと笑いを含んだ声が聞こえた。
「東堂くんは巻島くんが好きなんだと思ってたなぁ」
 聞いたことのない声だ。何でお前が巻ちゃんの名を知っているのだと尋ねたいが疼く体が許さない。
「でも、会いに行こうとしてたのは違う子なんだね」
 霞んだ視界に見える四角いそれがなんなのか理解できない。
「巻島くんに送ったメール、可愛いね。恋愛相談なんて」
 れんあい。ああ、じっとしていては始まらないと助言されて電車に乗って、会いにいこうとしていた。想いを伝えに。
「ぅ、ぁっああ」
 前触れなく仰向けに転がされ、さんざん嬲られた箇所に再び性器を挿入される。室内に何人いるのか解らないが既に一巡以上はしていた。
「や、やら、もぉ、もぉ、あっいく、あ」
 過剰に投与された薬と強引に教え込まれた快感に何度も追い上げられる。何度絶頂を迎えても足りない。がくがくと腰が震え、射精せずに達した東堂に携帯を持った男がまた優しく言った。
「東堂くんの恋、応援したいんだけどさぁ」
 何を言われているのか解らない。とにかく気持ちよさを追うことに必死になる。手を伸ばし、差し出される指や性器を舐め、揺さぶられるままに声を上げる。
「ぁ、あ、」
「それでね。来てもらったんだ」
「っーあ」
 東堂の身体を嬲っていた手が一斉に離れる。床に崩れ、尚足りないと見上げた先に見えたのはそれまで東堂を弄んでいた「誰か」ではなかった。
「―み」
 一瞬、霞み歪んでいた思考が正常になりかけた。羞恥と嫌悪で自尊心を軸に気が狂う直前、東堂の意識は逃避と防御が働いた精神は快感に呑まれた。
「みどう、すじ」
 頬が緩み、愛しい相手に手を伸ばす。手足を縛られた御堂筋は東堂の異常な様子に何と声を掛けるか迷っているように見えた。罵声が聞こえる。東堂に向けたものではない。
 何でこんな、東堂くんになにを、何が目的で
 泣き叫ぶのにも近い罵声に返答はなく、崩れ落ちたままの東堂の肩に大きな手が置かれる。耳元で矢張り笑いを含んだ声が聞こえた。
「ほら、東堂くん。キミの好きな子なんだろう。」
 混乱する瞳と目が合う。すきな子、言われた通りだ。夏に見てからずっと好きだった。ほとんど一目ぼれで、近距離で声をかけられた時は旧友が不思議に思うほど表情と声をなくした。自覚して、親友に相談し、好きだと伝えに行くはずだった。その相手が目の前にいて、どうすれば、どうすれば
「ぃーっ!や、なん、なにする。東ドウくん!」
 うれしい。大好きな彼に名前を呼ばれている。骨ばった肌に触れられる。きっとフられ、二度とレース以外で会うことはできず、触る事もできないと思っていた肌に。
「ひっ?や、やめ、やめぇ、キモ、キモい」
 ズボンをおろし、性器を取り出して舌を這わせた。体に見合わない幼稚な部分。何度か同じ練習場で盗み見たままだ。やっと触れられる。舐められる。できることなら体内に迎え入れて腰を振り、精液を搾り取りたい。
「みろ、ぉすじ」
 どれだけ咥えて舐めても反応しない箇所に顔が歪む。なんで、気持ちいい筈なのに。
「東堂くん。これ」
 背後から差し出されたそれに、思わず満面の笑みを返していた。礼までは言わなかったがひったくるように奪った小さな包装を薄い腹に乗り上げて破く。興奮で手が上手く動かず白い肌に粉が舞った。
「…え、な、それなんなん」
「らいじょうぶ、すぐきもちよく、なるからぁ」
 指にたっぷり粉を着け、閉じようとする薄い唇を割り開いて押し込んだ。吐こうとするので強引に唇を合わせて唾液を絡めて奥へ流し込む。
「ん、ぐっ、う」
「は、はぁあ…ひ、もちぃい」
 脳が痺れる。びりびりと体中に電気が走る。腰が震え、触れていない性器からとろとろと精液が漏れるのが解った。跨った身体を振り返ると、透明な体液が漏れてはいるが勃起はしていなかった。
「んん…なんで…」
 涙がこみ上げそうになった。ほぐれた後孔はいつでも愛しい彼を受け入れる準備があるというのに肝心の器官は力を持ってくれない。
「ね、みどうすじ、おれのこときらいなのか?」
 両手で頬を包んで視線を合わせる。うつろになった真っ黒な瞳は焦点が合っていない。長い舌がだらりと垂れている。赤い軟体動物に似たそれを咥え、性器への愛撫のように舐め上げると意識の薄れた身体が大げさに跳ねた。
「みどうすじも、きもち、いいんだぁ…」
 肌に滲む汗が香る。性交の香りだ。性に淡白に見える思い人が興奮している事実に抑えきれず東堂は一度射精した。
「ぁっ、あ、あ」
 油送と同じ動きで腰を振り、浮いたアバラに精液を撒く。
「はぁあ…あ」
 精液に塗れた薄い腹を見て望む答えを思いつき、跨った身体から降りて細い足首を掴んだ。拘束を解き、脚を左右に開いて中心に顔を寄せる。腕の拘束はそれまで見守っていた誰かが解いていた。解放されても御堂筋は少しも暴れなかった。
「ん、ふふ、みどうすじ、みどう。すじ」
 一度目と同じように力をもたない性器を舐め、それからゆっくりと舌を這わせて後ろに挿し入れる。太腿が痙攣し、悲鳴が上がった。
「ピッギ…ぁ、やめ、とう、ど」
 顔を上げ、破くのに失敗してばらまいた粉を掬い取って舌に乗せてもう一度挿し込んだ。硬直した体がすぐに反応して跳ねはじめる。暴れるというには力が入らない体はまるで強請るように揺れていた。
「は、みどうすじかわいいぃ」
 舌を放して指を挿し込み掻きまわす。
「あっ、あ、あっぁ、ア」
 動きに合わせて漏れる声に気を良くして更に本数を増やす。ぐちゃぐちゃと言う音が耳と脳に響く。
「きもちぃ、よな、みど、すじ」
 早く繋がりたい。急く気持ちを抑え、掻きまわしながら腹に唇を這わせる。臍を舐め、浮いた骨を舐め、鍛えられた胸筋をしゃぶる。胸の突起を噛めば骨ばかりの身体が痙攣して絶頂を伝えた。口に含んだ時は控えめだった箇所は舐めれば舐める程腫れ上がり、少し唇を放せば切なそうに存在を主張した。
「はぁあ…かわいぃい…」
 頬を寄せ、赤く腫れた個所にキスをして噛む。そのたびに薄い唇から漏れる甲高い声に東堂の声も同じように上ずって行った。
「みどうすじぃ、かわいい」
 指を引き抜いて、待ちわびていた性器でほぐした箇所に触れた。それだけで達しそうになる。
「いまいれる、から」
 上ずり、掠れた声で告げた。返事はない。上ずって掠れた声がひいひいと鳴いているだけだ。ああ、待っている。雄を押し込まれて揺さぶられ、内側に種付されるのを待っている。わかる。そうされるとたまらくなって脳が多幸感で満ちるのを東堂はよくわかっている。
「いぃっ、ぃ、あ」
「は、ぁっあ、ああぁ、ぁっん、すご、きもち、ひもちいい、みどうすじっ、み」
 きつい、けれど柔らかな肉壁に包まれて視界に星が飛ぶ。
「ぁっあぁぁぁあっ!」
 あまりの快感に動きもせずに達してしまった。
「ぃ、やや、やっ、あ、なか、なかに」
「ん、ん、きもちい…すき」
 止まらない射精に腰を揺すり、唾液を漏らしながら東堂は自身が口にした言葉に脳を揺さぶられた。
 御堂筋翔に、好きだと告げるために京都に向かっていた。途中で背後から襲われ、車に乗せられた。それから、
「あ、ぁ」
 埋め込んだ性器は萎えない。愛しい相手だから。ずっと焦がれていた相手だから。薬のせいなのか、恋の所為なのかわからない。
「みどうすじ…」
 泣きじゃくる御堂筋を見下ろしても東堂の胸中に後悔は沸かなかった。沸いてくるのは快感と、もっとほしいという欲求だ。
「もっと…」
「ひっ」
 腰骨を掴んで動き始めた東堂に、御堂筋の顔が恐怖に歪む。数時間前までそうであったのに、東堂は恐怖が理解できなかった。きもちいのに、どうしてそんなに
「みどうすじ、すき」
 快感と、幸福感。ほかには何もいらない。
 


周囲から聞こえる、どこかで聞いたことのある電子音や低い笑い声はもう耳に入ってこなかった。

2016.02.07

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