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pdr
※山中に転ぶ(山神×御)

※神様パロ
※ぬるい異種姦
※ショタ




「どうしてもお前がいいと言ってきかなくてな」
 走り疲れ、足がもつれて転んだ子供にゆっくりと近付く。人ではない存在を本能で悟っているのか大きな瞳に涙が浮かぶ。震えた足で立ちあがれずに、けれど少しでも離れようと後ずさる。袖のないシャツと半ズボンから伸びる細い手足は同種に嫌悪されても自然だと想えた。
 山に神として意識を持ってから人間を観察してきた。良いものも悪いものも神には等しく同じだ。命があるかないかの違いで、山に足を多く踏み入れた存在をはっきりと認識しやすい。
 少年が何のために山を越えているのかも知っていた。病気の母を見舞う為に山を越え、軽い車体で走り続ける。夏の間毎日走る姿に興味を持った。記憶を読めば友も、母以外の家族もいない。預けられた先でも喜ばれているわけではなく、少年も少年らしい敏感な心でそれを察していた。
 神である自身には好き嫌いはない。ないが、山の中の小さなものの意思を汲んで惹かれることはあった。
 動植物に好かれる人間の多くは不純物のない精神ばかりだ。孤独な物ほど近くなる。独りペダルを回す少年を、山のあらゆるものが惹かれていた。
「そう怯えるな。」
 伸ばした手の先に乗った小さな生き物がキシキシと鳴く。
「ヒッ、い、や」
「痛いことはしない。終われば記憶も消してやろう」
 背中に当たる樹の感触にそれ以上下がれないと気付いた少年が震える足で立ちあがろうと地面に手をつく。目を細め、地中に眠る生き物を呼ぶ。願っていた時を待ちわびていた樹の根は音もなく細い手首に絡みついた。
「ぇう、ぇ、なん、や、」
 焦って根を掴んだ逆の手も絡み取り、地面についた膝も同様に縛り付けた。手首と膝で地面に縫い付けられ、悲鳴とも嗚咽ともつかない声で少年が助けを求める。どれだけ叫んでも誰も来ないと、周囲の静けさに恐らく少年も解っている筈だ。それでもそうせずにいられないのは手足の先から這う感触の所為だろう。
「学校で虫と呼ばれているのを知ってるぞ。似たもの同士仲良くしてやってくれ」
 近づき、膝をついて顎を掬う。視線を合わせて微笑んだ。涙を流し始めた目が、一瞬目の前の顔に見惚れる。次いで言われた言葉を理解して首を振った。
「あまり嫌がるな。可哀想だろう。」
 声に出して笑い、額と頬に唇を当てる。ざわざわと指から腕、脚、肌を伝って服の隙間まで上る多数の節足動物に小さいけれど綺麗な歯の並んだ口が大きく開いて声を上げた。笑いが止まらない。歯を食いしばり唇を開かなければ許さなかったというのに開いた箇所へ我先にと腹足綱の生き物が群がった。飲み込みたくないだろうが噛むこともできずえづき、大きく咳き込む。
「ぁ、は。ふ、うぐ」
 焦点を失った目が、目前の生き物に縋る。人型である以外は体に群がる生き物たちと同じかそれ以上に違うというのに。
 ズボンの裾から入り込んだ節足動物や網翅目の感触に薄い皮膚が粟立つ。逃げようと暴れるたび、いくつかの小さな生き物が地面に落ちるがどれだけ落ちてもすぐに肌によじ登る。
「は、ぁ゛〜ア゛」
 大きく見開かれた目に群がろうとする小さな双翅目は、さすがに可哀想かと手を翳して退けてやる。可哀想、というよりは自身の身体に起こる事を見せておきたかった。小さな耳も同じように守ってやった。
 決して肌を傷付けず、肌に這う全てが求愛を繰り返す。それぞれの動きは小さいが集団で一斉に動く事で大きな音を出した。中に入りたがる動きに動きを制限された身体が必死に身悶えた。
「心配しなくていい。中に入っても死なないようにしてある。」
「ぅあっ、ぁ、…?」
 はっきり聞こえる声に驚愕した目からぼろぼろと涙が溢れた。敏感な箇所に次々と群がる細く乾いた脚、ぬるつく腹足、強引に粘膜をこじ開けられる感触。未知への恐怖で意識がぶれるのが解る。黒い瞳がぐるりと回り、白目を剥いた。
「まだ眠るには早いが」
 前後から性感を刺激された幼い身体は地面に崩れ落ちて小さく痙攣している。
「もう少し育つまで待った方がよかったな」
 名残惜しげに剥がれない者たちに苦笑いして説得して汗のにじんだ肌から離す。拘束していた手首や膝も解放し、未だ僅かに痙攣する身体を拾い上げた。
 葉と木々で隠した子供の愛車の元まで運ぶ間も大きな瞳は開かなかった。汗ばんだ肌を撫で、片手で抱え直してから小さな愛車も持ち上げた。
 子供に与えられた部屋に細い身体を横たえ、幼い姿に化けて家族を欺いて山に戻った。空から見下ろした家には子供の居場所が見当たらない。
 歪な体が回すペダルを思い浮かべた。自然にはない不思議な機体。同じ道に立てば理解できるのだろうか。
 人間に化けることは容易だが経歴や人格を一から形成し、目的の人間と同じ場所に立つのは骨が折れる。山の神―近い将来そう呼ばれる選手が現れる。地続きになっている世界の未来はある程度解る。
 違う場所であっても山で育ち、山を理解できる人間ならば意識の同化は難しくない。
 次に会う時は同じ場所で、同じ物を見られるかもしれない。長く存在した神としての意識で初めて、なにか一つに固執をした。悪い物ではないと、胸中に沸いた熱に唇をあげた。


2015/11/16

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