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pdr
※眩華/和の文字パレット弐(新御)
和の文字パレット(https://twitter.com/needbeen_s/status/5121222791576944641)使用させていただきました。

前後も落ちもないです




21夏虫色/向日葵/感じ合う

 電気を消す。雨戸を閉めた部屋は真っ暗だ。手に触れる熱以外に確かな物はない。目を凝らしても手に触れた感触が本当に彼であるのか確証は持てなかった。自身の胸に触れた。分厚い筋肉だ。乗りあげたベッドに横たわる熱を確かめる。自分とは全く違う厚さと質の筋肉。掌と指に伝わる鼓動。女性とは違うが柔らかい胸から骨の浮いた個所を指でなぞる。
 高い室温に汗ばんだ肌は触れる個所をしっとりと馴染ませた。一度腹まで下ろした手を胸元に戻して殆ど膨らみのない乳首に触れる。どれだけ嬲っても反応をしないのは下肢と同じだ。精神的な拒絶だけで性的反応を起こさない。解ってから今まで飽きもせず繰り返した。解りにくい反応を感じ取る為に視界を閉ざして触れる。僅かに香り立つ汗とうっすら泡立つ肌。
 暗闇の中で感じる確かな感触に欲情する。興奮し高ぶった熱を太腿に擦りつけた。低く呻く声を感じたくて胸を合わせて顔を近付ける。速さの違う鼓動が重なり呼吸が僅かに苦しくなった。
 もっと深く鼓動も呼吸も感じたくなりぎゅうと目を閉じる。ちかちかと瞼の裏に光る色は暗闇と真逆の明るさだ。室内にこもった熱は直に夏を感じる。瞼の裏に浮かんだまぶしい緑に光が混ざり季節に相応しい花が脳に浮かんだ。太陽を追い掛ける花はまるで自分のようだった。
 リザルトを超えてから先の上り坂で御堂筋はずっと新開より先を走った。俯いて視線を逸らしたが焼きついた背中は未だに鮮明に思い出せる。二度と忘れる事の出来ないまぶしい背。花が太陽を追い続けるように新開もあの背を追い続けている。
 明るい中では眩しすぎて抑えきれず壊してしまう。暗くして視界を閉ざし互いしかいない世界の中で初めて大切にできる。壊したい訳ではない。自分と彼は同じ生き物で同じ感覚を共有できると教えたい。重ねた心臓の鼓動がゆっくりと揃う。柔らかな頬に唇を寄せた。
 背中を追う形ではなく正面から胸を顔を身体を合わせる。これ以上にないほど幸せな感覚だ。きっと陽を追う花も決して届かないと知っていながら幸せを感じているのだろう。焦げ付きそうな胸元にもう一度強く目を閉じた。

2015/11/20




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あきゅろす。
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