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※闇華/和の文字パレット弐(新御)

和の文字パレット(https://twitter.com/needbeen_s/status/5121222791576944641)使用させていただきました。

前後も落ちもないです





14滅紫/鈴蘭/支えあう

 ※成人設定

 レースを終えてから少しの休息で選手同士で食事に行くことは多い。飲み会にならないのはアルコールを飲まない人間が多いからだ。御堂筋もその一人で、新開の向かいに座り無愛想な顔でウーロン茶を流し込んでいた。

「ぜんぜん、陽にやけないよな、御堂筋、くん」
 口がうまく回らない自覚はある。飲みすぎだと旧友に止められたが目の前で食事をする想い人に意識を奪われ気付けば普段の倍は飲んでいた。
 好きだと告げるタイミングを逃し続けていた。いつからそういう目で見ていたのか記憶にない。ただ、いつの間にか目で追っていた。
 御堂筋が新開を気に留めたのは初めて会ったインターハイだけで、否、インターハイの前からスプリントリザルトまでだ。折るべき主力として研究し、観察して叩き潰した。終わってしまえば御堂筋にとって新開隼人はただの他人でライバルですらない。自転車から降りれば尚更だった。街で顔を合わせても彼の視界に新開は入らずレース以外で御堂筋から新開の名を呼んだ事は一度もない。
 ふらつく足はわざとではなかったが、歩けないと嘯いて薄い肩に腕を回した。面倒くさそうな御堂筋に後輩が申し訳なさそうにしていたが同じマンションに住んでいるからと送ると言う後輩の申し出をろれつの回らない声で断った。しがみついた御堂筋の身体が僅かに強張ったのは気のせいではない。その瞬間まで御堂筋は新開が同じマンションに住んでいる事を知らなかったのだ。
「これでも焼けたわ」
 ぽつりと零された声が予想より遠い位置にあり新開はうなだれていた顔を上げた。酒気を避けて顔をそむけた御堂筋の首が目に入る。ゆっくり首を回し、辺りを見た。線路沿いの狭い道路に人気はない。線路と逆にある雑木林はよく言う心霊スポットで夏場には若者が来ると聞くがまだ肌寒いこの季節は寄りつく人間はいなかった。
「―し」
 歩みを止めた新開の名を呼びかけた薄い唇を分厚い手で覆う。酔いの回った身体は力が入らなかったが体重を掛けて捕まえれば腕力の使い道を知らない御堂筋は簡単に捕まった。
 土と葉の匂い。自身から漂う酒の臭いはあまり気にならなかった。暴れるのを忘れて混乱した相手を手加減せずに物陰に引きずり込み自分ごと地面に倒れ込む。筋肉量の差で潰された声は大きな悲鳴とは言い難かった。
 木々に遮られて街灯の明かりは届かず、けれど月の明かりで辺りは不気味な色に染まっている。視界は悪く、新開の目に見えるのは不健康な肌の色と明るい色の植物だけだ。丁度御堂筋の肩に潰された花を見て笑いが漏れる。毒のある綺麗な花。まるで彼だと酔った頭が愉快に唄った。
 恐怖にひきつった声で御堂筋が何かを言っていたがうまく聞こえない。がさがさと草の音ばかり煩くて眉を寄せる。
 男を寝た経験はない。挿入する箇所は一つしかないと辺りをつけて指を差し込んで乾いた狭い個所を掻きまわした。恐怖に上乗せされた苦痛に、組み敷いた身体から泣き声が漏れたが酒の回った頭には快感の喘ぎに聞こえて喉が鳴る。早く挿入したいと欲が先走った。
「あ…?」
 痛みと抵抗の疲労で動かなくなった脚を抱えて、入れようと自身のズボンをくつろげたところで上がった体温と裏腹に性器が全く反応していないと気付いた。アルコールのせいだと理解はできた。だというのに興奮しきった脳と体は目の前の獲物を欲している。焦りで涙が浮かんだ。なんで、と口にしてから硬直し体温の下がった肌を乱暴に撫でまわした。土と葉の香りに混じって吐瀉物の臭いを感じた。見上げれば半分意識を失っている御堂筋が咳き込んでいる。ついさっき食べたばかりの食事をほとんど吐いて、嗚咽に混じってそれでも新開を罵っていた。真っ青になった顔もすえた臭いも体温が下がり脂汗をかいている体も全てに欲情し脳が焼切れそうなほど興奮しているのに最も望む行為に至れない。
 涙が溢れ、喉が焼けそうになった。逃げようともがく御堂筋に益々悲しみが募って手首を掴んで地面に押し付ける。胃液臭い唇に噛み付き、それから頬、首、鎖骨と歯を滑らせては無遠慮に噛み付いた。起ちあがらない性器を鍛えられた太腿にこすり付け性交と同じ動きで腰を振る。いやだと繰り返す震えた声に、今彼を犯しているのだと錯覚した。
 すえた臭いが濃くなり、土と葉の臭いが遠くなる。血の香りが混ざって腰が震えた。僅かに皮膚を食い破り飲み込んだがまだ足りない。もっと、と呟いてから薄い皮膚に何度も歯を立てる。
 どれくらいそうしていたか解らない。虚ろな目で宙を見て言葉ですら抵抗をしなくなっている御堂筋に、新開はゆっくりと呼吸を整えて長いため息と共にすきだよと初めて告げた。
 
 
2015/11/13

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