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pdr
※確華/和の文字パレット弐(悠御)
和の文字パレット(https://twitter.com/needbeen_s/status/5121222791576944641)使用させていただきました。

前後も落ちもないです




15天色/のうぜんかずら/競いあう
 
※未来捏造。成人設定。飲酒。

 性別と、同じ競技で走る以外の共通点を知らない。まるで違う生き物だ。
 すっかり力の抜けた体をベッドまで運ぶのは骨が折れた。兄程筋力のない悠人には自分よりずっと長身の男を軽々とは持ち上げられない。思ったよりは軽くとも、泥酔し脱力した身体は重い。なんとかベッドに寝かせて一息ついてから見下ろして小さく口笛を吹いた。見れば見る程、人間離れした顔と体だ。
 ダメもとで家に呼んでみれば、オフシーズンで暇を持て余しているらしい御堂筋はあっさり了承した。先日成人した悠人が最近はまっている清酒を出すと嫌そうな顔をしながらも口をつけ、数口も飲まないうちに机に突っ伏してしまった。出された物を断らない礼儀正しさを意外だと感じ、酒の弱さにやっぱりと顔をほころばせた。確信があったわけではないが、兄や元チームメイトに誘われて御堂筋がごくまれに参加する酒の席で彼が自分からアルコールを口にしてないのを悠人は気付いていた。移動手段が自転車だからだろうとも思ったが、アルコールのニオイにすら顔を顰めているように見えたのは間違いではなかった。
「黒以外も着ればいいのに」
 見慣れた黒いシャツを捲り、ほとんど日焼けのない肌に触れた。酒で上がった体温に悠人の手は冷たいのか触れた個所から鳥肌が立っていく。
 ああ、と厚い唇からため息が漏れた。自分の手で彼の肌が変化しているのだと思うと背中が震える。感触にうっすら開いた目はうっすらと涙の膜が張っていた。
「みどうすじ、さん」
 なにをしているのかと問おうと開かれた口から見える歯が白く、潤んだ瞳の黒さが際立つ。普段は白い頬にアルコールでじわりと赤みが差し、まるで
 骨ばった手首を掴んでシーツに押し付ける。薄い唇に噛み付くと僅かに酒の香りがした。
「うっ、ん、んん」
 逃げようとする顔を追いかけて強引に唇を合わせる。息苦しさで閉じきれない口から長い舌が垂れるので無遠慮に噛みついた。舌同士の接触に腰に甘い痺れが走り耐え切れずに甘い吐息を漏らせば間近で御堂筋の顔が盛大に顰められる。寄せられる眉間を見て皮膚が薄いなぁとぼんやり感じたが霞のかかった思考とは真逆に体は昂ぶり押さえつける手に力が籠った。
 混乱してる御堂筋の反応は鈍く(酒のせいもあったかもしれない)ベッド脇に脱ぎ捨ててあったズボンから引き抜いたベルトを拾い上げて少しの労力もなく手首を縛りあげられた。
 必死に身悶える姿に思わず口元を抑えた。腰に跨って見下ろす身体を形容する言葉があるとすれば醜い以外にないだろうと悠人は思う。
「オレさぁ御堂筋さん」
 わざと年下ぶった甘えを含む声を出すと暴れていた身体が大人しくなる。どれだけ暴れても解放する気が見えないからなのか体力に限界を感じたのかは解らない。
「御堂筋さんが本当に人間なのかずっと不思議だったんだよね」
 初めて会った夏から、悠人は御堂筋翔という生き物が不思議で仕方なかった。歪に伸びた手足も奇妙にくびれた胴体も大きすぎる目口も低い鼻も。爬虫類、あるいは虫なのではないかと想い、走る姿を見てその疑惑はますます深まった。
「なにい、っ…」
 怒鳴ろうとする口に、洗い立てで被せず放置していた枕カバーを押し込んだ。
「大声出さないでくださいよ。壁薄いんで」 
 何を勝手なと再び暴れ出す身体はしかし、縛った手首と乗り上げた重みに抵抗できない。首元までシャツを捲り、テーピングの痕から胸元に掌を滑らせた。冷たさとは違う鳥肌が一気に広まっていく。
「この辺はフツーの人間っぽいですね」
 長い脚がばたばたと腰の下で暴れている。無視して胸から腹、腰に指を滑らせて同時に体を太腿の上に移動する。それほど重いわけではないが悠人の体重でも御堂筋の脚は動かないらしい。動かなくなった足の代わりに上半身を捩っていたが下着ごとズボンを下げると硬直して見開かれた目が見上げてくる。
「ちょっと確認するだけですから」
 人好きのする笑みを向け、露わになった下肢をまじまじと見つめる。長身に似合わない未発達な性器に矢張り彼は自分とは違う生き物なのではと首を捻る。
「御堂筋さんオレの一つ上でしたよね?」
 両手で強弱をつけて擦るが一向に反応を見せない箇所に尚首を捻って続けた。敏感な箇所への刺激で乗り上げた腿がひきつるのを感じる。痛みや快感を間違いなく感じている筈なのに触れている箇所は微塵も芯を持たない。男に触られて気持ち悪いのか、或いはアルコールの所為なのか。
 携帯用のローションをポケットから取り出し、掌にあける。接触がなくなり僅かに安堵した御堂筋がきつく閉じていた目を開いた。悠人の行動に思い当たることがないのか不思議そうに瞬きをする顔は未発達な器官と同じに幼く見えた。
「―っ」
 未だ噛まされたままの布に、悲鳴が吸い込まれる。想像していたよりも指を挿し入れた個所は柔らかかった。経験があるのかと尋ねても混乱している御堂筋は答えなかった。そもそも口に押し込んだ布が彼の声を全て飲み込んでいることを悠人は失念していた。
 薄っぺらい体を横ばいにし、曝け出した場所を指で抉る。汚いと感じないのはまだ自分と違う生き物に見えているからだ。汚いと思うより虫や爬虫類に触る子供と同じに、奇妙な体を暴く好奇心が勝っていた。布から漏れる声もまるで鳴き声だ。
 二本目を差し込んで掻きまわしているうちに、跳ねる腰が抵抗や反射以外でそうなっているのだと気付いた。快感を覚えているのだと思うと無性に興奮し、乱暴に指を引き抜いて震える肩を押した。俯せにされた御堂筋がくぐもった声で抗議するが奇妙な生き物があげる鳴き声は悠人には理解できない。
 着なれたスウェットを脱ぎ捨て、歪な生き物に挿入した。
 何度か部屋に呼び、同じベッドで体を重ねた彼女よりもハリガネムシのような身体にずっと興奮を覚えている。悲観もなければ後悔もなく、逃げようともがく腰を掴んで揺するのに夢中になった。
 初めて会った夏もその次の夏も、季節を恨みたくなるほど晴天だったのに悠人の記憶にその青はない。真っ黒な二つの瞳が消した。走っている最中には気付かなかったが大会の後、布団に入って思い出すのは晴れ晴れとした空ではなくどす黒いと言ってもいい瞳だった。とても同じ生き物と思えない選手に悠人の夜は奪われた。夢に現れるたびに奇怪な生き物へと変わっていく御堂筋翔という自転車乗りが本当に人間なのかを確認する方法を、彼が高校を卒業してからずっと考えていた。
 腰から前に回した手で薄い腹を強く押す。声にならない叫びを上げて反らされた背が痙攣した。快感を感じてるのは明らかで、セックスで得る悦びは同じなのだと感心した。
 けれど、と悠人は思う。けれど腕の中の身体は矢張り自分とは違う生き物だ。長い手足や歪で薄っぺらな胴、つるんとした顔だけではない。道の上に居る御堂筋と、そうでない御堂筋の姿は蛹と蝶ほど違う。直線で変貌する兄ともかけ離れた変化は御堂筋が人間でない事を物語っているではないか。
 加減をせずに腹部を圧迫すれば性器を埋め込んだ箇所が物欲しげに締まる。意識が飛びかけているのか身悶える仕草はなくなり素直に腰が快感に跳ねていた。
「―は、やっぱり」
 小さく笑い声を漏らし、促されるままに内側に精を吐く。同時に腹部を押した手に、無反応だった性器が当たった。僅かに熱を持っている気はしたが硬度は変わらず濡れても居ない。
「やっぱり、オレとは違う生き物だ」
 不気味に見える生物と違うと、妙な確信に名誉を覚えて笑う。興奮はまだやみそうになかった。


2015/11/12

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