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pdr
※鬱華/和の文字パレット弐(新御)
和の文字パレット(https://twitter.com/needbeen_s/status/5121222791576944641)使用させていただきました。

前後も落ちもないです




13桑の実色/彼岸花/ぶつけあう

 ベッドの上を這う腕を掴んで引き寄せる。引き寄せる時には加減をせずに力を籠めるが、押さえつける腕は手加減をする。暴れた体は引き寄せられると解っていながら逃げる。もう無理だ、休ませて、やめて、と叫ぶ声には涙が混じっていた。
 強く押さえつけずに何度も逃がす理由は自分でも解らなかった。引きずり戻し、何度も挿入する。繰り返し犯し欲を吐き出した場所は簡単に最奥まで挿し込める。シーツの上で跳ねる体は限界を訴えて悲鳴をあげた。
 感じる場所を抉り、肌がざわめくのを見て目を細める。腰を掴む腕を緩めて痙攣した体が落ち着くのを待った。呼吸を整え曖昧になった意識を戻せば無駄だと知りながら薄い身体は這って逃げる。鈍くなった動きで奥まで入った箇所を必死に離そうと身悶えていた。
「なぁ」
 時間をかけて放れた身体を、更に離すために手足を動かす。シーツを掴み、ベッドの上をずるずると這う。手も足もかわいそうなほど震えていて、少し触れただけで崩れ落ちてしまいそうだ。
「なんで逃げるの」
 かろうじて支えている身体が崩れないように肌に触れず耳元に唇を寄せて言う。体力の限界を訴えていた震えが違う意味を持って震えるのを見逃さない。新開の低く甘い声に、御堂筋の体中が歓喜している。
「きもちい、だろ」
 逃げるためにシーツを掴んだ拳がぎゅうと握られた。枕に押し付けた顔から呻き声が漏れる。
「ほら」
 続けて囁き、崩れ落ちた肩を掴んだ。覆いかぶさってほとんど抵抗しない身体に挿入する。簡単に入った、と耳元で言えば埋め込んだ体が今度こそ泣き声をあげた。
 何度も掴み引きずった肌には痣が残っている。今日着いたばかりの痣の色と、数日前につけた色は随分違う、と笑った。
 白い肌に残った爪痕の鬱血はどこかで見た花に似ている。御堂筋に痣を残せば残すだけ、胸が幸福で満ちていく。出来れば彼から自分に、同じだけ痣を残してほしいとさえ思った。押し倒し、犯す間に暴れる際に長い手足が肌に当たり傷が残る。もっとほしい。もっと欲しいが、それを望んだ瞬間から御堂筋は新開に傷をつけることを極端に怯えはじめた。
「逃げてもいいぜ」
 もう一度、腰を掴んでいた手から力を抜く。
「ほら。もっとちゃんと逃げないと」
 背骨を撫で、震える体にわざと聞こえるように笑ってやる。怯えて暴れ、行為の証を彼からつけてくれと願ってだ。
 いやだ、震える泣き声が言う。行為を続けたくない。体を繋げるのはもうできない。新開の肌に傷をつけたくない。三文字の言葉にどれだけの意味があるのか理解できる。理解できるが受け入れることはできない。
「オレだって嫌だよ」
 断られた言葉に、拒絶を重ねる。
 性行為が愛を交えぶつけ合うものなら、それが愛でなく違う何かであっても大差はないのではないか。もともと自分と彼とは愛情を持って対話が出来るような仲ではない。どちらかが折れるまで続けるしかないと互いに解っている。
 道の上で先に折られた新開は、彼が折れるのを待っていた。思いの外頑丈に出来ていた少年の精神を折るために自身でも理解しがたい感情をぶつけ続けている。
 力なく振られる首を見て、もう一度笑う。項に唇を寄せて優しくキスをしてからゆっくりと口を開いた。囁くためではなく荒れた肌に歯を立てるために。

2015/11/10

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あきゅろす。
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