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pdr
※果華/和の文字パレット弐(新御)

和の文字パレット(https://twitter.com/needbeen_s/status/5121222791576944641)使用させていただきました。

前後も落ちもないです




2蜂蜜色/李/重なり合う

 レースの為の健康管理には人一倍気を使うくせにそれ以外の面での御堂筋はとことん自身に無頓着だった。摂取できればいいからと果物も野菜も皮を剥かずに噛み砕く。一人暮らしの部屋に訪れるたび、キッチンに無造作に置かれた果物を剥いてやるのは新開の楽しみになっていた。これといってこだわりがあるわけでもないので新開が切った果物を御堂筋は大人しく口に運ぶ。
 手に入りやすくキッチンに放置しても差し支えのないリンゴやバナナ、あるいは蜜柑が常備されているが今日そこに置かれていたのは李だった。皮を剥かなくとも食べられると文句を言う御堂筋にしたいのだからさせてくれと断って実を露わにした。
 御堂筋の口に入るものを、外郭を剥いで中身を露出させる。奇妙な興奮を覚えていることを咀嚼し飲みこむ彼は知らない。濃い色の皮を捲った下は未だ熟していない薄黄色だった。
「なにしとん」
「これまだ固いからさ、キッチン借りるぜ」
「もう使っとるやろ」
 流し台の上に置かれたまな板だけではなくガス台や食器棚に触れるのだと言えば嫌そうな視線が向けられる。それでなくとも時間を問わずに押しかけてくる相手を御堂筋は快く思っていない。知っていて新開は迷惑がる視線も言葉も態度も見ないふりをする。
 小さな鍋と砂糖と取り出したところですぐ隣に御堂筋が移動している事に気が付いた。珍しい、と顔を向けると持っていた鍋をとりあげられる。
「あ」
 止める間もなく、皮を剥いただけの果物は御堂筋の大きな口に放り込まれた。酸味の強さに顔が顰められる。数十秒ほど口内で転がされた丸い果物は果肉を剥された種のみシンクに吐き出された。満足げに目を細めて新開を見下ろす顔は子供じみた勝利を語っていた。何も言わない新開に、口元を拭って背を向けた御堂筋の肘を掴む。
「なに」
 大きな口の中で転がされた果肉を想像した。どろりと果汁が広がり形のいい歯も長い舌も砕けた果肉で塗れる。酸味に反応して溢れた唾液と混じり口中が潤っている。飲みこむために上下した喉を新開が凝視していた事を御堂筋は気付いていない。
「な、ん…」
 半端に振り向いた顎を掴み唇を合わせる。やはりまだ熟してなかった、と口の中に残った味に眉をひそめた。身悶える体が加減しない新開の腕に怯む。セックスをする時はいつもそうだ。欲情し加減を忘れた新開の腕は、御堂筋が全力で抵抗してもびくともせず返って興奮を煽る。結果として暴れるだけ酷い行為を強いられると覚えた身体は乱暴な腕に反射で従うようになった。
「ま、新開く、まだ昼―」
 明るい時間からはしたくないと言葉で抗おうとするのでもう一度唇を塞ぐ。一度火がついてしまえば自身でも制御できない。薄い身体を引っ張り両手首を掴んで流し台の縁に掴まらせた。背後から項を舐めて衣服に手を入れれば先を予感した御堂筋が悲鳴に似た声をあげた。キッチンから一続きになっている部屋の奥に畳まれた布団を、大きな瞳が縋るように見ている。せめて布団でという無言の訴えも、新開は拾えなかった。
「ひっ―」
 御堂筋の部屋を訪れる際には必ず常備している携帯用のローションをポケットから取り出し乱暴に袋を破く。指を挿し入れて掻きまわせば広い背中がびくびくと跳ねた。
「ぁぅ、あっや、め」
 首を振る後姿に舌を舐め、膝まで下げたズボンを片脚で足首まで引き摺り下ろす。
「いや、や、や」
 胸に腕を回して強く抱き、耳元で挿入を告げてからゆっくりと奥まで入れた。震える足が棚に当たり音を立てる。強く抱きしめすぎたせいで御堂筋の口から漏れる呼吸が乱れていた。
「ひ、―っぁ、ア」
 ひっくり返った呼吸と声に僅かに残っていた理性を持っていかれる。力の入らない上半身がシンクに倒れ込む。強く抱いた身体から離れず、新開も体を折った。
「アッ…あ、やめ、も」
「うん。おれも」
 限界を訴える声に頷いて抱きしめた腕に更に力を込める。声にならない悲鳴を上げて達した体の内側に、新開もうず巻いていた感情と共に欲を吐く。
 薄い身体の体内に取り込まれる果肉になれたらどんなにいいか。咀嚼し飲みこむ彼の口から喉、腹を見つめるたびに考える。できれば自身も彼の大きな口に放り込まれたい。告げれば軽蔑の眼差しを向けられるのは明らかだ。だから言わない。言わずにただ果物を剥き、差し出し、それから彼を抱く。
 顔を寄せれば口元から甘酸っぱい香りがした。早くどけと小さく動く体が訴えていたがもう少し骨ばった背中に凭れていたかったので鼻孔をくすぐる香りを多く取り入れるために返事の代わりに大きく息を吸った。

2015/10/25

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