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※結華/和の文字パレット弐(新御)
※散華/和の文字パレット弐(新御)
和の文字パレット(https://twitter.com/needbeen_s/status/5121222791576944641)使用させていただきました。
前後も落ちもないです
24青藍/蓮華草/汚しあう
「昔女の子が作ってるの見て真似したんだけどうまくいかなくて」
今回もうまくできなかった。と新開は笑った。掌に乗せたくたびれた植物は茎が不格好に結ばれている。
練習後の更衣室には御堂筋以外誰も居ない。彼が一番遅くまで残っていると知って訪れた。施錠確認も彼に一任されているので見回りもない。
不機嫌な視線が寄越され、新開は両手を上げた。降参のポーズをする男の脇を抜け、上半身を晒した選手がシャワー室に向かう。
なんて無防備なのだろうと目を細め、しおれた植物を床に放って後を追った。一瞬視界にっ入った紫色の花は、過去に見た少女が編んでいたものと違ったかもしれないと過ったが先を行く広い背中に思考はすぐに持っていかれる。
シャワー室にも人影はない。確認するまでもない事実に、前を歩いていた腕を掴み一人分の仕切りに押し込んで強引に振り向かせた。罵声が飛ぶ前に片手で口を塞いで首元に噛み付く。暴れる手は新開を押しのけるのではなくシャワーの蛇口を捻ろうとしていた。蛇口に触れる直前で口から放した手首を掴み壁に押し付ける。空いた唇に自分の其れを重ねて舌を押し込んだ。幸い怒鳴ろうと大きく開かれていたので思ったよりも奥に届く。喉を舐めた時と同じに汗の香りが鼻をつく。体臭の少ない身体でも全力でペダルを回した直後は汗の香りを感じることができる。
彼のニオイだと深く息を吸う。唇の隙間から漏れる声が、シャワーを浴びさせろと訴えているのは解ったが痛いほどに握る手で拒否を示した。両手首をまとめて胸元に押し付け、片手で乱暴にレーシングパンツを引き摺り下ろす。
「っ、ぅ、はぁ…ええ加減、に」
唇を放せば怒りに満ちた声が漏れる。汗でべたつく体を撫でまわされて気持が悪いと言葉以上にきつい視線が物語っていた。水の出ていないタイルが肌に当たり痛いのか時折肌がひくついた。僅かな反応に興奮し、制止の声を無視して携帯用の小さなパックに入ったローションを咥えて袋を歯で破った。目の前で行為の準備を見せつけられた御堂筋がますます怒りを露わに暴れ出すが練習で疲弊した体は押さえつける腕をはねのけられない。それでなくとも新開と御堂筋の腕力の差は歴然だ。
「やや、きたな…つ」
汗まみれの自分の身体を指していると知りながら、御堂筋の声が新開の侵入をおぞましく汚い物だと怯えているように聞こえた。事実、性的な接触を拒み逃げ回る相手を待ち伏せ追いかけて抱いている自分はひどく汚らしい。付き合っているわけでもなければ新開は彼に好きだと告げた事すらなかった。
最低限慣らした箇所に埋め込んだ性器はきつく締め上げられて新開も快感より痛みが勝って唇を噛んだ。片脚を持ち上げて背中を壁に押し付ける。力の抜けた体は繋がった箇所から支える新開の腕がなければずるずると床に落ちているだろう。
「ぁ、は、ぁう」
揺さぶられるままに漏れる声は徐々に掠れて泣き声が混ざる。解放されたものの力なく垂れた腕は新開の首には決して回されない。そりゃあそうかと痛みの勝る行為の中で快感の走る脳が呟いた。自信を犯す恐ろしく醜い存在に触れるなど、お綺麗な子供にはできないのだ。触られた箇所から腐っていくと信じているかもしれない。それほど御堂筋は行為の最中に新開に触れられることも触れることも拒んでいた。
「ぁっ…」
何度も抱かれた所為で開かれた性感に薄い腰が跳ねる。
「い、や、やや」
力を持たない性器から僅かに先走りが漏れて思わず笑った。新開の笑みに御堂筋の瞳に浮かんでいた生理的な涙が恐怖のそれに変わる。歯を鳴らして震える頬に触れ、優しく口付けた。
「うん、俺もきもちい」
真っ黒な瞳に、自身の瞳が映り込むほど至近距離で覗き込む。興奮し上がった体温で普段よりも瞳の色が明るくなっている気がした。大きく黒い瞳に映る自分の瞳は、鏡で見るよりずっと美しかった。
「っ、あ」
内側に吐精された感触で御堂筋の目から今度こそ涙がこぼれた。いやだ、いやだと唇が戦慄く。蛇口を捻ろうと再び伸ばされた手首をもう一度掴んだ。
「まだ終わってない」
「…シャワーくらい浴びてから、」
「どうせ汚れる」
訴えを無視し腰を押し進めてやれば反論は悲鳴に変わる。練習後の健全な汗も、性交の卑猥なものに変わっていく。一度精を放った場所は一度目よりずっと柔らかく新開を迎え入れた。太腿を伝う体液の白さに床に投げ捨てた花を思い出した。
作ろうとして失敗した小さな指輪よりもずっと、汗まみれの内股に流れる白い体液の方が彼を所有物と自覚できる気がした。
2015/10/20
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