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pdr
軽口(東御)
初めてネタそのB
でもエロではない
後々エロ追加するかもしれない




 ええよと言われたので、それを言葉通りに受け取った。場所や時間は出来限り希望を叶えた。
 交際して半年、同じ部屋に住んで三カ月。外では交際を隠しているものの部屋の中では東堂が望めば手を繋ぐこともあれば触れるだけのキスをしたこともある。そろそろ先に進んでもいいんじゃないかと問えばそっけなく「せやね」と返されたが否定ではないだけで安堵した。
 そっけない返事を繰り返されながらもどこでしたいか、どちらがいいか、できれば抱きたいが構わないかをしつこく聞き、ようやく決めた日程に東堂は小さくガッツポーズをしていた。
 夕飯を終えて風呂から上がった東堂が寝室に行かずソファに座っているのを見て御堂筋が首を傾げた。
「なんや東ドウくん今日見るテレビあったっけ?」
 常であれば風呂上りには寝室向かい肌の手入れをしているからなのは解ったがあれだけ念を押していたのに、湯上り以外の理由で東堂が頬を染めている理由を御堂筋は察していない。
「…や、その、もちろん寝室で待つつもりなんだが」
 羞恥で柄にもなく俯いた東堂と、言葉の意味を考える御堂筋の間に短い沈黙が流れた。秒針の響く音がやけに大きく感じる。沈黙を破ったのは御堂筋の「ああ」という間の抜けた声だった。
「本気やったん」
 疑問形と呼ぶにはやけに呆れた響きを含んだ言葉に今度は東堂が考え込む番だった。
「は」
「まぁええけど。ボクもお風呂入ってくるわぁ」
 風呂場のドアが閉まる音で我に返った東堂は十数秒前の会話を反芻して頭を抱えた。告白をして、交際を受けた相手と同棲し、性交渉を申し込んで日付まで決めた結果があの会話。意味が解らない。御堂筋特有の人を馬鹿にした演技でもなければ、本気を確認した後に少しの驚きやためらいもない声が全く理解できなかった。
 兎も角了承は得たのだ。これから初夜がはじまるのだからいつまでも頭を抱えているわけにもいかない。意を決して立ち上がり無駄に気合の入った足取りで寝室に向かう。
 用意しておいたローションや避妊具、それ以外にもネットや書物で調べた道具をこの日のために買い、昼の間に綺麗に整えたベッドに並べる。色気のない指さし確認をし、手順を思い描いて再び頬を染めたところで浴室のドアが開く音がして心臓が跳ねあがった。
 無意識に耳を澄ましてしまいタオルで体を拭う音も寝巻代わりのジャージを着る音も聞こえた。歯磨きをする音が聞こえて、時計に目をやった。御堂筋の歯磨きは長い。緊張で高鳴る心臓を落ち着けるために携帯電話を取り出し、最終確認をするためにメモしてあったwebのページを開いた。

「まだ起きとったん」
 寝室のドアを開けた御堂筋は先程と同じきょとんとした顔で言った。
「だから、その、すると言っただろう」
 はいはい、と念押しした東堂への返事と変わらぬそっけない声を出して御堂筋は少しも照れずにベッドに腰掛けた。
「でぇ?ボクはなにしたらええの?」
 半分閉じた目にどきりとする。少しも行為に対する緊張や羞恥がなく面倒そうな声に違和感を覚えながらも骨ばった肩に両手を乗せて顔を寄せた。触れるだけのキスは初めてではない。抵抗のない薄い唇を割り開いて舌を差し込むのは初めてだった。慣れないキスに東堂も緊張したがそれ以上に興奮した。夢中で見た目の割に厚みを持たない舌に吸い付いて甘噛みした。
 顔を離す頃には御堂筋の顔にも若干赤みがさしておりほっと息をつく。
 けれど安堵したのは一瞬で、ジャージを脱がそうとした手を強く掴まれてぶつけられた疑問に東堂は硬直した。
「ちょお待ち、冗談とちゃうん?」
「冗談…?」
 御堂筋の頬は確かに赤みがさしていたが羞恥は一切見られない。呼吸を想うようにできなかっただけなのだと察した瞬間一気に頭が冷めた。
 何度念押ししてもそっけない返事を返していたのは東堂の本気を御堂筋が本気で信じていなかったからだ。
「ボク男やけど」
「知ってるが」
「美形でも可愛くもあらへんけど」
「好みは人それぞれだろうが」
 捲られた服を丁寧に戻して言う御堂筋の顔はどこまでも疑問に満ちている。元々自転車から離れた彼は人と積極的に目を合わせることをしない。その彼が珍しく東堂をまっすぐ見ているというのに瞳は疑惑一色だ。
「…冗談だ」
 密着していた身体を放し、膝を跨いだまま掴んでいた肩も放した。腰の両脇に手を置き、広く薄い胸にうなだれた頭を軽く当てる。
 顔を見なくとも御堂筋の表情が解った。やっぱり自分に欲情などするわけがないのだととこか得意な顔に間違いない。うなだれた先に見える己の下半身がどれだけ情けない状態なのか御堂筋は少しも気付かずにもう寝ようと提案してくる。
「と、言うと思ったか?」
 ふぁ、と先よりずっと真の抜けた声が薄い唇から漏れた。カチューシャのない東堂の顔は普段より色気があると御堂筋がいつかからかったことがある。前髪から覗く目に怒りが滲んでいたが、とっくに視線を合わせなくなっていた御堂筋は危険を察知できなかった。

2015/09/04

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あきゅろす。
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