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pdr
※月光花(東御)
初ネタその二
無理矢理系






 思ったより抵抗がないと思った。それが間違いだと気付いたのは泣きじゃくる顔を見てからだった。
「本気で抵抗しないからいいのだと思ったんだが」
 素直な感想が思わず口をついて出た。怒りに満ちた瞳が東堂を射抜き、罵声を飛ばそうとした口はほんの少し腰を動かしてやればすぐに涙を流し嬌声に変わる。
 密着する身体を剥すために必死になっている腕は、矢張り最初と同じに何の抵抗にもなっていなかった。

 御堂筋の出場するレースを調べ、彼が泊まる宿まで足を運んだ目的は最初から一つだった。距離を考えればレースの後一泊するのは解っていたし参加メンバーを見て彼が一人であることも予想がついた。学校ではなく個人で参加した御堂筋は年上の選手が多く出る草レースで見事一位を獲り、けれど誰からも祝福の言葉を送られず部屋に戻った。疲弊した御堂筋が背後からついてくる東堂に気付かずドアを開いてしまったのは完全な油断だ。疲れだけではなく、知り合いがいないと決め込んでいた御堂筋はレースのあと素をさらけ出していた。
 狂人と言っても過言ではない選手御堂筋翔の奥にあるものを薄々感じていた東堂は己の勘の良さに感謝した。答え合わせが済んだあとは計画を実行に移すだけだ。
 ドアを開いた身体を乱暴に部屋に押し込み自分も入ってから鍵をかけ、チェーンも忘れずにかけた。混乱し動転する御堂筋の身体に乗り上げて押さえつけ、レーパンを引き下げて指を入れる。疲れからの脱力で、思った以上に順調に進んだ。俯せに押さえつけた身体が東堂をはねのけようとばたばたと手足を振っていた。見当違いな方向にばかり振るものだからドアからすぐのせまい通路では長い手足は自身にダメージを与えるだけだった。二歳年下とはいえ同じ男だ。全力で暴れられては行為を続けることはできないだろうと踏んでいた。挿入をするための準備である粘着質な音が室内に響く頃にはレース以外の汗にまみれた身体がぜぇぜぇと息をしており、暴れる気配はすっかりなくなっていた。何度か必死に振り返る中で東堂の顔を認めていたので相手を視認して受け入れたのかと声をかけたが返事はなかった。
 応えない御堂筋を抱え上げてベッドに運んでも大した抵抗はない。諦めたような目は東堂を見なかった。数メートルの距離を運ぶのに脱力した身体の重みはつらかったがそもそもの重量が予想よりも軽かったので苦労は少なかった。
 ベッドに下ろすと無言で布団を被ろうとしたので掛布を床に投げ捨てまだ息の整っていない体をひっくり返して腰を掴んだ。ポケットに忍ばせていた避妊具の包装を口で破り片手で装着する。俯せた顔のすぐ脇に破り捨てられた包装を見つけた御堂筋がびくりと震えた。
「え、な」
 ここまで来て何を驚くのかと一瞬首を捻ってから十分に解した箇所に昂ぶりっ放しだったそれを挿入した。
「ぁ、あっ〜ぁあぁっ!」
 無遠慮に揺さぶると悲鳴があがった。締め付ける内側は狭くきつかったが裂けてはいない。多少の痛みはあるだろうが前に回した手で長身に不釣合いな幼い性器に触れればそこが僅かに芯を持ち先端から僅かな先走りを垂らしているのが解る。痛いだけではないはずだ。
 シーツを掴む手に力がこもり、内側がびくびくと痙攣してから全身も震えて脱力する。握りこんでいた性器からの射精はなかったが明らかに達した姿に満足してから東堂も精を吐き出すために腰の動きを速めた。

 二度目の行為で仰向けにした御堂筋が何度か泣いている事に気付いて東堂は目を瞬かせた。男に組み敷かれ犯される恐怖や屈辱は確かに解る。けれど御堂筋は本気で抵抗しなかったのではないか、と疑問が浮かんだ。何度か競い合ったレースでの彼はそんなに弱弱しい生き物ではなかった。接触したレースを思い出せば御堂筋翔は力強く、山での競り合いですら危機を感じる程だった。垣間見えた弱さはあくまで精神的なところであり強引に事に及べばレース同様弾き返されると思っていた。
 それがどうだ。不意打ちとはいえ東堂でさえ初めての行為はまるで子供を抑え込むのと変わらぬ容易さで成されてしまった。
 本気で抵抗しなかった―
 東堂が口にした言葉は、御堂筋だけではなく東堂自身にも驚きになって還ってきた。御堂筋は最初から全力で謎の強襲者を拒んでいたのだ。彼にとっての全力が、最初から彼を犯すつもりだった人間には意味がないほど無力だっただけで。
 ペダルを回していない足は歩く事すら困難で、ハンドルを握らない手に掴める物は何もない。ゴールを目指していない瞳は敵を捉えることもなく、結果御堂筋は東堂に簡単に犯された。
「―だな」
 ぽつりと呟いた言葉に御堂筋の目がもう一度見開かれる。抵抗する腕にはなんの意味もなく、驚きで硬直した体は東堂の意のままに蹂躙できた。

 ああ、最高だな

 いくつもの才能を手にしていると自負する東堂から見て、たった一つを欲し極める少年は醜く、滑稽にも愚かにも見えた。ひとつを求めた彼の手は他全てを零してからっぽだ。固く握られた空っぽの手を掴み、白むほど力の入った指を一本一本掌から引き剥がす。開いた手の中にあるたった一つを奪い取ったあと、御堂筋翔はどうなるのだろう。想像するだけで背中が震えた。
 ひとつを求めて歪んだ体は、裏側から見ると恐ろしいほどに美しい。東堂尽八は美しい物が好きだった。歪むほど美しい彼を手にすることに躊躇がなくて当然だ。理不尽な理屈は東堂にとって正当な感情であり、彼が勝利を手にするために語るのと同じ正義に他ならない。

 闇の深まった空に、閉め忘れたカーテンから月明かりが差し込んだ。薄い灯りに浮かぶ肌は酷く醜い。レース後の汗の香りも部屋に充満する性の香りも何もかもが穢れていた。ただひとつ、部屋の惨状に満足し満面の笑みを浮かべる男の顔だけは誰が見てもため息をついて見惚れる程に美しかった。 

2015/09/04

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