[携帯モード] [URL送信]

pdr
※無機質な恋人(東御)
初めてネタを書きたかっただけのぱちみど。
和姦(ぽい)版







 告白をしたのは初めて会った夏の終わりだった。まだ残暑の厳しいその日、じっとりとした京都の空気の中で。
 どういう意味だと細められた目に恋だと告げれば益々訝しげに眉が顰められる。
 意識して出す特有の毒気ではなく、御堂筋自身無意識に振りまく年に似合わぬ色気が細められた瞳から溢れていた。喉が焼けそうだ。じりじりとした暑さにではない。焦がれた相手が目の前に居ながら手を伸ばすことを許されない、許す意味さえ理解されない事実にだ。

 お前に惚れていると告げてから、二人でホテルに入るまでは予想外に短かった。御堂筋が東堂の気持ちを正しく理解していなかったからであり、東堂が年相応の性欲を持て余していたからだ。
 

「…随分丁寧に手入れしてるんだな」
「手入れェ?」
 間延びした声に、夢中で撫でまわしていた身体から視線を上げて眠そうな顔を見る。
「まさか、何もしてないのか」
「なにも、ってぇ?」
 あくびをかみ殺す声は先程と同じに不自然に語尾が延びた。
「脱毛とか、剃毛とか」
 決して肌触りがいいとは言えない肌は、しかし一本の産毛すらなく同じ年代の男子にしては全身が不自然な程つるりとしていた。上から下まで見ても、体毛と呼べるのは毛先に僅かな癖のある髪と薄い眉、至近距離で見なければわからない程度の睫毛。
「なんそれ」
 きょとんとした顔は東堂の言葉が純粋に未知のものだと語っていた。個人差はあれど、ここまでの人間は初めてだった。東堂自身体毛が濃くはなく、自転車競技に邪魔にならない程度の手入れで済んではいたが御堂筋の身体は言葉で表すなら異常そのものだった。
 ベッドに入るなり眠そうな顔をした御堂筋から下着まで衣類を剥ぎ取り全身に触れている間の違和感はそれだけではない。細長く骨ばっているくせに厭に柔らかい関節や体格の割に未発達で見合わない大きさの性器も同様だった。
 進化だ、と興奮した脳とは別な場所で言葉が浮かぶ。御堂筋翔はたった17年の歳月で人間としてではなくロードレーサーとして進化した。必要のない部分を切り捨てて残った僅かな部位で走るための身体に。もしかするとこれは体ではないのかもしれない。筋肉がある部分から、骨の感触がじかに触れる部分まで指を滑らせて東堂は目を閉じる。自転車のパーツを撫でているのかもしれない。無暗に広いベッドの上で、自分は今自転車を抱いている。美しい車体だ。この世に二つとないそれに、東堂は恋をしている。
 彼を慕っている人間は東堂だけではない。嫌っていながら目を離さない者も居るし純粋さを汲み取って傍に居たいと願う者もいる。東堂に近い感情、選手として尊敬して内にある何かを感じ取っている者もだ。その中で誰より早く恋だと告げて手を掴めたのは奇跡だった。
「…もうええ?」
 眠たげな声は、行為の終わりを期待してる。まだ何もしてないと小さく呟き手で触れていた箇所を舌でなぞった。くすぐったいと訴えるのを無視して、服で隠れる場所に痕を残す。ジャージで隠れている肌は恐ろしいほどに白かった。肌の炎症に使う代謝すらもったいないとでもいうほどの白さはジャージで防がれているからというにはあまりに完璧に紫外線をはねのけている。これも進化なのかもしれないと感動を覚えた。感動、違う、これは興奮だ。事実東堂は間違いなく欲情していた。
「ん、東ド、く」
 それを目的としたホテルに連れ込まれて尚、東堂の気持ちを理解できていない少年の唇に噛み付く。長い舌を絡め取り宝石にのようだと常々思っている歯を無遠慮に舐めまわした。
 生理的な反射と恐らく嫌悪だろうが、御堂筋の身体はびくびくと跳ねて東堂を喜ばせた。体中のどこを舐めても無反応だったのにと目を細めて口内を蹂躙する。レースの最中、或いはレースに通ずる場で大きく開かれる口が性感帯であったなどこうしなければ解らなかった。解ってしまうと急に不安が襲ってくる。彼が無防備に開くそこを、何かの拍子に誰かに触れられはしないだろうか。
 夢中で貪っている間に、薄い身体はすっかり力をなくしていた。眠気と未知の快感に弄ばれたせいかぼんやりとした顔は歳よりずっと幼い表情を晒している。欲を隠すことなく喉を鳴らし、ベッドに乗せていたカバンからローションとゴムを取り出す。鍛え上げられた太腿を開いて体をねじ込み、性急衣に事を進めた。違和感と不快感に御堂筋が抵抗を見せたが遅く、最低限慣らした箇所に東堂が自身をねじ込む頃には非難の声は懇願に変わっていた。
 勘も良く器用であると自負している東堂には御堂筋の変化を本人すら自覚のないところまで把握できた。嫌がる声の中に見える怯えた悲鳴、更に怯えが痛みや嫌悪からだけではなく快感によるものだと悟った瞬間薄いゴムの中に射精していた。
 こわいと何度も繰り返すか細い声、眠気だけではない体温の上昇、明らかな快感での痙攣。一度達したにも関わらずイヤだと叫ぶ体をねじ伏せ、片脚を抱えてもっと奥へとねじ込んだ。
 ひぃひぃと泣く声は幼い子供を連想させる。不気味だと揶揄される大きな目も小さな鼻も泣き声と同じに幼児へ退行でもしたのかと錯覚させた。
 何度もこわいと繰り返すので二度目はできるだけ優しく抱いた。脈を打ち呼吸し、汗をかいているのに前戯と変わらず、腕の中にあるのは人間ではなく無機質なパーツのように感じる。快感を快感として受け入れることを頑なに拒む御堂筋は、人間であることを否定しているのだ。人間としての悦びを受け入れてはいけないとまるで狂信者のように。
 否定すればするほど大きくなる快感に、いつの間にか御堂筋は気を失っていた。
 初めての行為はうまくいかないと思っていたが予想よりスムーズに進んだ。というより予想以上に。後ろだけで気持ちよくなれるかどうかという心配は彼自身が抑え込みすぎていた感覚が彼にとって仇になった。東堂にとってはこの上なく幸運で、ぐったりとベッドに沈み込み涙の痕をつけた顔を見つめても後悔は微塵もなかった。
 未だ僅かに芯を持ったままのそれを気絶した体から引き抜くと泣き声に似た呻きが漏れる。
「すまない」
 謝罪は行為に対してではない。想いを伝えて同意の上で入ったホテルで行為に及んだ以上東堂が謝る必要は皆無だ。それでもそう言葉にしたのは彼を人間だと思わなかった瞬間が最も興奮したからで、敬愛するべき競技を汚してしまったと内心で感じたからだ。
 手触りが良いとは言えない髪を梳き、汗ばんだ額に唇を寄せる。目が覚めたら起こるであろう恋人に改めて謝らなくてはいけないな、と苦笑いをした。

2015/09/04

[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!