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pdr
※懇意(東御)
※同棲東御





 御堂筋の身体は酷く鈍い。正確に言えば自転車から離れた御堂筋の神経は鈍くなる。セックスの最中にも直接的な、痛いほどの接触でなければ反応はない。挿入すら初めの何度かに眉をひそめた程度だ。性器に至ってはどれだけ強く握り擦っても硬度を持たない。もちろん痛みに体を強張らせることはある。けれど一度も、快感をもって声をあげたことはない。

「あっ…」
 びくりと跳ねた身体に唇が歪む。両手首を確りと押さえつけ、涙の滲む顔を正面から見つめる。何が起こっているのか解らない表情だ。レースで不測の事態に見舞われた時も同じ顔をしている。見開いた目と、小さくなる黒目。綺麗な歯の間から軟体動物に似た舌がぬらぬらと蠢いていた。
「ん、ぁっ…なに、なに、や」
 押さえつけられた身体を必死によじって未知の感覚に怯える御堂筋にまた笑みが零れた。熱のこもった吐息と共に聞こえる笑い声に涙のにじんだ目が睨みあげてくる。
「東ド、ウ、く…も、やめっぇあっ、あ!」
 片腕を放し、シーツに落ちていたスイッチを捻る。弱で動いていた玩具が組み敷いた腹の中で暴れ出し一気に全身が震え汗が噴き出す。
 モーター音は思っていたよりも大きく、暗い室内に無機質な音が響き渡った。薄い腰がいやらしくうねり、掠れた悲鳴と同時に大きく跳ね上がる。解放された片手は抵抗の余裕もなくシーツを掴んでいた。
「あぅ、ぅ、んあっ、あ、や、や」
 反応しない性器にもサイズに合わせた性具をはめ込み固定した。女性器を性交に模したそれに初めは眉を顰めるだけだったが後ろを刺激して肌が過敏になった頃急に外してくれと言いだした。渋る東堂に自分で外そうと伸ばした手を掴んでシーツに縫い付けてから、御堂筋の身体は徐々に性感を開いた。
 自身の手でそれを引きずり出せなかった事は悔しかったが、体に快感をそれとして教え込むのが先決と決めて行動に移した。食事に混ぜたのは薬ではなく媚薬効果があるとされる果物や野菜、それから蜂蜜だ。それが効いたのか、或いはこれまでの努力が実を結んだのかは解らないが、兎も角御堂筋は埋め込んだ玩具に反応した。残念ながら性具に包まれた器官は立ちあがらなかったが快感を感じているのは間違いないので外そうとする手はうまく抑え込む。
「は、やくっ…終わらせ…ひっ」
 動かせない手の代わりに視線で東堂に訴える。下肢を見やる真意はさっさと性欲を発散させて寝てしまえ、だ。
「本当にお前は理解が足りない」
 先程までの上機嫌な声から一変、低い声で言うとすっかり弱気になった顔が僅かに歪む。
「好きと言って、同じ部屋に住んで、肌を重ねているのに未だにただの性欲処理だと思ってる」
 何が違う、と震える唇が音を出さずに言う。音を出せば聞きたくない自身の喘ぎを寝室に響かせることになる。声を殺して漏れる吐息に遠慮せずにスイッチを強にした。
「ひっ、ぅ、あ、〜〜〜っ!」
 全身を激しく痙攣させ、甲高い悲鳴が上がる。背が反り、喉が晒される。喉仏の目立たない、けれど肉の少ない喉が酷く魅力的だ。興奮を抑えずに浮き上がった骨に舌を這わせた。
「ぁ、ぁっ」
 達したばかりの敏感な肌に感じる舌の感触に白い肌が赤く染まる。小さく痙攣を繰り返す身体が苦しげに喘ぐ。
「みどう、すじ」
 常にない恋人の痴態に限界を感じて顔を上げる。強引に事を進めはしたが挿入の合意はとらねばと声をかけた。
「…御堂筋?」
 反らされた顔を、頬に触れた手で優しく戻して目を覗く。大きな瞳は見開かれているがどこも見ていなかった。完全に意識を失っている。
 無理もない。感じた事のない性感を強引に暴いて教え込んだのだ。少なからず予想はしていた。こうなったら無理に行為には至らないとも決めていた。

  性具から引き抜いた力を持たない器官に滴る液体がローションだけではなかったのがせめてもの救いだと無理に納得する。少し夢中になりすぎた、次は気を付けよう、と前向きに嗜好を巡らせ恋人の身体を拭いながら東堂は肩を落とした。


2015/08/18

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