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pdr
※切り口(新御)


 大きく形のいい爪はしかし、先端がぎざぎざと荒れている。メディアの露出が増える夏の間は気を付けているが冬になると御堂筋の爪はいつもそうだった。
 舌先でなぞると僅かに引っ掛かる。左手の人差し指を第一関節まで口に含み、爪を丁寧に舐めた。
「…ん」
 すっかり意識のない身体が反射で声を上げる。神経が集中している手や指先は敏感だ。新開の恋人も例にもれず行為の最中に舌を這わせれば可愛らしい反応を示してくれた。
「っ、う、ん…」
 ぎざぎざの爪と指の隙間を丁寧に舐めると性器を埋め込んだ内側がきゅうと締まる。急な刺激に思わず指先に歯を立ててしまった。
「いっ…ぁ、い」
「あ、ごめん」
 意識のないまま顰められた眉間を優しく撫でる。噛まないように気を付けて今度は中指を口内に迎え入れた。
「ふっ…、ふ、ぅあっ、あ」
 締め付けられた快感に誘われ夢中で指をしゃぶり、同時に腰を動かす。何度か精を放った箇所が卑猥な音を立てた。聴覚に伝わる興奮を抑えずに唾液の溢れる口元を拭いもせずに続ける。唇からもわざと音が鳴るように指先を嬲れば繋がった場所だけではなく全身が反応するのでたまらない。
「んっ、ん、ぅ…ぅ〜」
「ああ、悪い、もう、すこし」
 組み敷いた身体が意識をなくす前にも同じことを言ったのを思い出す。もう少しだけ付き合ってくれ、すぐ終わるから。
「いっあ、あっ、あ」
 指先を咥えたまま、片手で太腿を抱えて乱暴に揺さぶった。目を覚まさない御堂筋の、うっすらと開いた口から垂れる舌に興奮し、含んだ指にまた歯を立ててしまう。痛みに小さく首が振られた。
「っ…ごめ、んっ…」
 嫌だと力なく振られる首が幼い子供を連想させ、長身の彼に不釣り合いな仕草に煽られて達した。
「…ほんと、ごめん」
 いつもそうだ、とぐったりした恋人の薄い唇を見て思う。彼のものと似ても似つかない分厚い唇で先まで嬲っていた指先に触れるだけのキスをした。
「ごめんな」
 もう少し、と告げた言葉を訂正し、放ったばかりで硬度を取り戻した性器をもう一度奥まで埋め込む。
 きっと明日目が覚めた御堂筋はあらゆる言葉で新開を罵るだろう。いくら今日が休みだからって動物じゃあるまいし理性はないのかと言われるかもしれない。
 そして不満げな顔でがりがりと爪を噛むに違いない。処理しきれない感情を持つと、御堂筋は爪を噛む。最近は新開と二人の時だけになったその癖は高校時代によくしていた。
 明日の朝、このベッドで爪を噛む姿を想像する。もう一度謝らなければいけないな、と冷める気配のない熱を感じて笑う。薬指にキスをして、荒れた爪に舌を這わせた。

2015/07/12

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