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午前三時(東御)


 関係を持ち始めた当初は嫌な顔しかしなかった。付き合ってくれと懇願し続けた東堂の粘り勝ちで、御堂筋は渋々頷いただけだ。今となってはあの2秒間の頷きさえなければと後悔しているに違いない。自転車から降りた御堂筋翔がロードレーサー御堂筋翔と別人であるように東堂尽八もまた恋人に接する態度は外の顔とは別人だった。
 どんなに別れると主張されても頑として受け入れず恋人なのだからと言い包めて同じ部屋に住み寝食を共にした。自転車に関しては口を出さなかったがこと人間関係に関しては周囲が引くほど拘束する。交際を始めて一月目でキスをして、三か月経った頃に体を重ねた。勿論男同士であり体が資本のスポーツ選手に無理はさせず挿入に至るまでには更に時間をかけた。
 幸いにして、否御堂筋にとっては不幸だろうが彼の腕力は凡人以下だった。正確に言えば身体能力は並だが使い方がまるでなっていない。どうすれば相手を抑え込めるか、抑え込まれぬように防げるか。道の上での駆け引きでは誰にも負けないと豪語する彼はベッド上での駆け引きで10センチも背が低い東堂に惨敗し続けている。
 せめてもの抵抗なのか極力出さない様にしていた声も、体を拓くにつれて素直にあげるようになった。快感に意識を飛ばし縋りついて喘ぐ姿に満足したのは一時で、出来るだけ自覚を持って東堂の手に狂わされる様をどうしても見たくなった。
 行為の後、死んだように眠る恋人の顔を見ながらどうすればいいのか考える。身体を傷付けぬように細心の注意を払い、できれば薬物は使用したくない。
 眉間に皺を寄せて考えて混んでいる自分に気付いて東堂は苦笑した。性行為について真剣に考えるなど覚えたての子供ではないか。悩みながら、好きない相手への贈り物を考えるようなわくわくとした気持ちも沸いていた。
 隠してはいるが御堂筋は性的接触も快感も嫌悪し恐怖している。勘のいい東堂が気付かないはずはなかった。はやく、と焦れる思いが腹部に溜まる気がした。脳裏に浮かんだ彼を追い詰める手段をはやく試してやりたい。
 真横で不穏な計画を立てている事に気付かない年下の恋人は穏やかな寝息を立てていた。

2015/06/13

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