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pdr
※タグ合作(新御)
タグ「もらったセリフで絵を描く」で「これからはずっと一緒だね」をお願いし、
タグ「絵から小説を書く」でれいらさんの絵から新御(新開さん視点)を書かせていただき、
さらにれいらさんが新御(御堂筋くん視点)で書いてくれました。

前半がT村作の新開さん視点。後半がれいらさん作の御堂筋くん視点です。





 電気を消し、カーテンを閉め切った室内は昼間にも関わらず真っ暗だった。遮光の機能を確りと果たしている布に、普段であれば感謝するが今だけはもう少し透けてくれてもいいのではないかと新開は思った。
 仰向けに横たわる想い人の細やかな表情が、暗闇に遮られてわからない。先程まで新開に伸ばされていた両手はシーツの上に落とされていた。憎まれ口を叩いていた唇もまっすぐ結ばれ、時折小さく吐息と喘ぎが漏れるだけだった。
 耳を澄まさなければわからないほどの音に、確かに彼を抱いているのだと感動する。瞳も口も閉じられているので特徴的な大きな目も綺麗な歯並びも見えない。そこにいるのが彼ではないのかもしれないと不安になる程部屋は暗かった。
 できるだけ近くで表情を見たくなり、頭の両脇に手をついて顔を寄せる。繋がった箇所が動いたせいでくぐもった声が漏れた。汗の香りがして、ああ彼だ、と思った。荒北ほど鼻が利くわけではないが新開は御堂筋の汗の香りをかぎ分けることができた。ほかの誰かと御堂筋だけで、あとの人間の汗の香りは皆同じだ。
 閉じられた目が開く瞬間を見たくて、動きを止めて顔を凝視する。
 動かない新開に焦れた瞳がうっすらと開く。唇は動かなかった。彼から強請った事は一度もない。これから先も恐らくないと新開は知っている。けれどこうして腕の中にいるのはまぎれもない事実だ。柔らかな頬に触れ、唇を寄せる。真っ暗な部屋で昼間から抱きあえる関係になるまではそれなりに時間が必要で、手間もかかった。無くしたものも少なくない。
 動かずにいる間に汗が幾分引き、触れ合う肌にも不快感はなかった。頬から肩に手を滑らせ、そっと背中に回す。自身より僅かに高い身長の彼はしかし、少し力を入れれば簡単に抱き上げられる。上半身を持ち上げて抱きしめ、耳元に唇を寄せた。暗闇で互いの表情は見えないが彼もきっと新開と同じに幸福に満ちた貌をしているのだろうと思った。口元に浮かぶ笑みを抑えず、笑いを含んだ声で呟く。
「これからはずっといっしょだね」 
 返事はなかったが、腕の中の身体が僅かに反応した。










 一体今は何月何日の何時なのか、御堂筋翔にはわからない。照明を落とした部屋は暗くて時計も見えず、重い遮光カーテンはぴたりと閉ざされてわずかな光もこぼれてこない。長時間にわたって無体を強いられた体は重だるく、腹の奥に残る質量が実物なのか感触の残滓なのかも曖昧だ。自分の手すらよく見えない闇の中では、のしかかってくる相手の輪郭もぼやけている。時間も空間も全てが曖昧で、相手の存在すら自分の幻覚かもしれない。なるほど一次元、点の世界の感覚とはこういうものだろうか。
 顔の両脇に質量が加わって、ベッドがぎしりと鳴いた。腹の奥の感触も蠢き、嗄れた喉が反射で音を立てる。のしかかった闇が自分に近付いて深く息を吸った時、自分のものとは違う甘い匂いが鼻腔を犯した。眩暈のする麝香の匂い、雄の匂い。それを鍵に開かれた体の記憶が勝手にざわざわと背筋を這い、腹の奥の熱に至る。
 勝手に――…そう、勝手に体が反応するのだ。勝手に内臓が動き、勝手に尻や腿の筋肉がひきつり、勝手に中のものを撫であげている。もっと奥へ欲しがっている。こんなことは望んでいない、もうこれ以上は勘弁してほしい。腹の奥を支配する熱の塊を、早くひっこ抜いてほしいのだ。なのにどうして、どうしてどうしてどうしてどうして
 厚い手が頬を撫で、柔らかな唇が自分の薄い唇を塞ぐ。汗の乾いた肌が触れ合い、頬の手は肩から背へ回って御堂筋の体を起こした。ただでさえ力の入らない体で両腕を抱きこまれて身動きが取れない。柔らかな癖毛が鼻を、頬を撫でてさらに強烈に麝香が香る。いやだ。いやだいやだいやだいやだやめてくれやめて

「これからはずっといっしょだね」

 甘く柔らかな低い声が耳朶を震わし、目覚めた記憶が体を完全に支配する。嫌なのに、恐ろしいのに、彼に躾けられた体がひくひくと悦んでいる。
 返して、返してくれ、ボクを返して、ボクの体をボクに返して、こんなのはボクやない、こんなのは――
 甘い香りを纏った闇が、闇に融けた自分を抱きかかえている。彼の腕の中で彼の都合のいい形に収まったこの体がまだ自分のものだなんて、どうしてそんな愚かしい間違いを犯したのだろう。こんなにされてしまった体を、今さら返されてどうすればいいのだ。筋肉は衰え、前立腺は過敏になり、彼の匂いや声だけで震えだすほど汚されたこの体でまた自転車に乗る? 勝てるわけがない、勝てもしないのに乗っても意味がない。自転車に乗らない自分に価値なんかない。彼の腕を出ても、もう自分の居場所なんてどこにもない。それがわかっているから、彼は勝利宣言をしたのだ。
 力の抜けたこの体は、もう御堂筋翔ではない。ただの抜け殻だ。こんなものに執着する彼が、いっそ哀れなように思えた。






視点が違うだけで世界が反転したようですね!すごい!
れいらさん本当にありがとうございました!

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