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カタコンベ(東御)
※年齢操作
※死ネタ・というか殺人ネタ






 あなたは3時間以内に7RTされたら、年の差のある設定でほのぼの休日デートな東御の、漫画または小説を書きます。 http://shindanmaker.com/293935








 御堂筋翔が東堂尽八と隣室のアパートに住んでいると知ったのは東堂尽八の葬儀の後だった。同じ自転車競技の選手で、隣人でもある東堂の葬儀に御堂筋は来なかった。元々親しくもない二人だったので御堂筋が彼の隣人だったと聞いてからも金城以外は誰も不思議には思わずにいた。
 

 東堂が死んで5年目の夏、御堂筋がレース中に倒れた。後輩を応援に来ていた金城はしかし、付添いのいない御堂筋が運び込まれた救急車両に乗るように頼まれて頷いた。補給までの距離を考えれば彼のチームやサポートを待つのは非効率すぎたからだ。運び込まれた狭い車内で救急隊員に示された場所に座った金城の足元に小さな影が滑り込んだ。
 フランス語で喋る救急隊員に、小さな子供は笑って金城の裾を掴んで答えた。御堂筋翔の知人だと。それも流暢なフランス語で。

 目を覚ました御堂筋の怯える顔を見て、小さな子供が東堂尽八―にわかには信じがたいが生まれ変わりという者なのだろう―だと納得した。レースを終えて御堂筋を見舞いに来た一同も信じられないという顔で幼い子供を囲んでいた。半信半疑だった仲間も巻島を見て滑舌のいい声で「巻ちゃん」と叫んだ姿をで納得した。
 カチューシャをするにはまだ小さな頭には細いヘアバンドがつけられている。綺麗な顔立ちは確かに東堂に似ていた。
 過去の記憶はあいまいなのだと言う東堂に最初に疑問をぶつけたのは荒北だった。
「おメェあんだけ巻ちゃん巻ちゃん言ってたクセになんで御堂筋の傍にいンの?」
 ガラの悪い声に、幼い瞳が僅かに揺らいだ。高すぎる椅子から下げていた両足をぶらぶらを振って決まりが悪そうに唇を尖らす。子供にしか見えない仕草に荒北もそれ以上問い詰める気にならなかったのか髪を掻いて黙り込んだ。
「御堂筋」
 荒北の質問を受け継ぐ形になったが、金城は半ば確信を持って御堂筋に質問の矛先を向けた。
「いつからだ?」
 目を覚ましてから一言も発さない御堂筋がびくりと体を強張らせる。ベッドの上で点滴に繋がれているため逃げることはできない。
「東堂はいつからお前と一緒に行動している」
「…今年の初めからや。ボクはそれが東ドウくんなんて認めてへん」
 信じられないと言いながら、ベッドの上に視線を落とす御堂筋の顔は恐怖に満ちていた。
 倒れたばかりの顔色の悪い人間をそれ以上苛めるなと看護師に追い出されて一同は炎天下に放り出された。
 病院から一番近い金城の家に、話を続けたかった人間が集まり病室の時と同じように小さな子供を囲んだ。異様な出来事ではあったがかつての仲間との再会を喜び子供特有の柔らかな頬をつついてからかったりもした。
 微笑ましい姿に金城も笑ったが、病室での御堂筋の姿にある違和感を思い出していた。東堂の葬儀の日に覚えた違和感。

 御堂筋が病室から消えたと金城の携帯電話に連絡が入った。どうしても金城の部屋に泊まりたいと言った東堂は自分で親に連絡して居間のソファで眠っていたが金城が部屋着から着替えている間に靴を履いていた。
 おれもいく、と発された声は舌足らずで子供らしかった。必死に御堂筋を心配しているような瞳も大事な年上の選手を案じる子供そのものだった。だというのに、金城は浅い眠りの中で5年前の葬儀で覚えた違和感の正体に近付いて子供の笑顔を純粋に受け入れることができなかった。

 御堂筋は病院からそれほど離れていない川に居た。大きな橋は観光名所としても有名で深夜でも通行人が何人か歩いている。街燈の下で川面を覗き込んでいた御堂筋の足元に東堂が駆け寄ってしがみついた。離れて歩いていた金城には聞こえなかったがどうやら心配したと訴えているらしかった。しがみつかれた御堂筋は言葉を失い、病室の時以上に恐怖に染まった目で子どもを見ていた。

 愛しげに御堂筋にしがみつく子供と、自分の腰よりも小さな東堂に怯える御堂筋に金城は確信した。
「そうか。」
 二人の声がハッキリと聞こえる位置まで近づき、車道を走る車の音に震えた声が消えない様に耳を澄ます。御堂筋の唇から漏れる声は弱弱しく、車の音と通行人の明るい会話でかき消されてしまいそうだった。
「だれも、信じてくれへんかった」
 愛しげに御堂筋にしがみつく幼い顔は幸福に満ちている。今の姿を見れば過去に御堂筋が訴えた恐怖を誰もが信じただろう。5年前の御堂筋が信じて相談できた相手は少数だ。関東に越したばかりの彼には知り合いが少なく、彼らは皆御堂筋よりも東堂の言葉を信じた。
 東堂が死んだのは自室だった。自室での事故、一酸化炭素中毒。古い建物だったので誰も疑わなかった。
「…お前は頭がいいからな。自首しろとは言わんが」
 アリバイもある彼を誰も疑わなかった。金城は一人彼なら犯行が可能だと気付いたがどうしても理由が解らなかった。
 
 御堂筋には東堂を殺す理由がない。ないと思っていた。姿を変えてまで御堂筋に会いに来た幼い彼を見るまでは。
 
 綺麗な街の灯りと幻想的な街燈の中で化け物と称される選手が膝を折った。自分の届く位置まで降りてきた肩に、子供が嬉しそうに笑う。美しい笑みだった。
 絞り出された声は許しを請う罪人の震えを孕んでいた。


 震える声は東堂に告白されたのは17歳の頃だったと言った。初めは冗談だと思ったらしい御堂筋はそれを適当に流した。ところが1年経っても2年経っても東堂は言葉を撤回せずあろうことか御堂筋の隣の部屋に越してきた。他者から気味悪がられる容姿の御堂筋と違い東堂は男女問わずで好かれた。隣室に押しかけてくるのもチームメイトだけではなくファンの女子も多かった。そうだったから御堂筋はますます東堂の言葉を信じなかった。御堂筋が二十歳になったころ、誰とも付き合う気がないのなら俺と付き合えばいいと東堂が言い始めた。
 誰とも付き合うつもりはなかったが、それは東堂と付き合う気もないのと同義語だった。そう告げても東堂は食い下がり、ならば部屋に人を入れるなと言い出した。御堂筋の部屋を訪れていた人間を日時や用事まで事細かに調べつくしていた隣人に、その時初めて恐怖した。
 鍵をかけていてもいつの間にか部屋に入り込まれ、酷い時には朝起きるとベッドに入っている隣人の事を御堂筋は何度か人に相談したが誰も信じなかった。まさか東堂尽八が御堂筋翔に惚れるなどと一蹴されたのだ。
 生活に入り込まれるどころか体を開かれる頃には逃げる手段はそれだけだと思うほど御堂筋は疲弊していた。

 東堂の葬儀に現れなかった御堂筋は忌々しい記憶を封印して5年間過ごした。観客に美しい子供を見つけるまでは。
 駆け寄ってきた子供に、プロ意識を持った御堂筋は邪険にせず手を振った。足元から離れない子供に困った母親にも急いでないので別にいいですと告げて子供の頭を撫でた。この子ロードレースが好きで、どうしてもあなたの出るレースを見たいとごねるから連れてきたんですと言われて苦手な愛想笑いで返事をしていると子供が急にトイレに行きたいと言い出した。母親が手を引こうとしてもおにいちゃんと行くと聞かず、トイレに連れて行く程度なら構いませんと近くのトイレに連れて行ってやった。デパートの中のトイレは清掃が行き届いて綺麗だった。中には誰も居なかった。
「御堂筋」
 それまで舌足らずな幼い声を発していたはずの可愛らしい唇からはっきりと己の名前が呼ばれた。細長い指を握る子供の握力が異常に強く感じる。
「また会えた」
 愛されるために生まれてきたような愛らしい笑顔だった。


 御堂筋の話の間、東堂はずっと彼の手を放さなかった。恨んでいるようには見えないが御堂筋のしたことを知らない風でもない。
「…これからどうするんだ」
 自首をしろとか、贖罪を求めるつもりは金城にはない。御堂筋が一人で悩みそれを選択したのならかつて彼を救えなかった人間の一人として見て見ぬふりをしてやろうとさえ思っていた。元々不自然ではあったが、殊更いびつになってしまった二人の関係を解消するも継続するも判断するのは二人であり金城ではない。
 御堂筋が再び東堂を手にかけようとするならばそれは止めなくてはいけないだろう。見ず知らずの、世間的にはレーサー御堂筋のファンである幼子を過去と同じように葬る事は難しい。何度か見た他のファンの子供に対して接する様を思い出しても御堂筋は子供や自身よりも弱い生き物を酷く扱うことはできないというのも理由の一つだ。
 金城に人間を殺した記憶はないが何度か他人を傷つけた事はある。どんなに些細なことであっても心身の消耗は激しかった。それが殺人となればどれだけかは想像できない。再び同じ人間を殺すという選択は、目の前で立ちあがれずにいる御堂筋にはできそうになかった。
「どうもしない。前と同じだ。」
 金城の問いに答えたのはまだ声変わりもしていない子供だった。
「なぁ御堂筋。何も変わらんよ」
 キラキラと輝いて見える笑みは、街燈で照らされているとはいえ暗い夜の空気さえ弾いて見える。大好きなおにいさんにあそぼうと誘いかけている子供の声と顔だ。
 温かく愛らしいはずの笑みに、金城の背にも寒気が走った。
「怪我がよくなるまでしばらくは安静だろう。一緒に観光しよう。」
 観光名所の多い街を、大好きな恋人と歩きたいとはしゃぐ笑みは過去に見た東堂の笑顔と同じだった。

 何も変わらない。その言葉は恐らくこの先何度御堂筋が彼を振り切ろうと戻ってくるという意味なのだろう。幼子に手を引かれて力なく歩く後姿からは逃げ出す気力は感じられなかった。
 明日はどこへ行こうかと話す明るい声がいくつかの世界遺産を挙げる。一日では回れない量に、子供の理想だと笑えなずにいたのは手を引かれて歩く男だけだはなかった。
 後ろからふたりを見守って歩く金城にすら明日の微笑ましいデートの話が未来永劫の呪いに聞こえていた。

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