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pdr
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※未来捏造ピロートーク

 けだるげに目を開けた御堂筋の顔を覗き込む。憔悴しているが寝起きと違う情事後特有の色気を孕んだ表情だ。
「朝まで起きないかと思ってた。」
 久しぶりの行為に加減できなかったのを自負していたので御堂筋の覚醒は意外だった。加減していたとしても御堂筋が朝まで起きないことはざらだ。自転車以外に関しての体力はからっきしな事も、性的快感を嫌悪し無意識に逃避して眠りの中に逃げている事も知っている。
「なんか飲む?」
 目を開いてはいるが指一本動かせない御堂筋の頬を撫でて聞くがゆっくりとした瞬きだけで返事はなかった。
「まだ寝てても平気、っていうか休みなんだから一日寝ててもいいし」
 猫の喉を撫でるようにやわらかく頬から喉を撫でる。二度目の瞬きには不機嫌そうだった。理由は解る。休日だからと約束していた元チームメイトたちと出かける予定を断るしかなくなったからだろう。久しぶりで加減できなかったとは言い訳でかつてのチームメイトと彼が遊びに行くのを邪魔したかったのかもしれないと苦笑して不機嫌そうな眉間を柔らかくくすぐった。
 広いベッドとはいえ長身の男ふたりが一緒に眠るには狭い。頬から耳、首を撫でて肩に触れて仰向けていた身体を横ばいに起こす。向かい合うように抱きしめると掠れた息が耳元で聞こえた。放せと聞こえたが布団に触れている腰の下に手を差し入れて更に密着する。何も纏っていない肌が触れる感触に息を漏らした。ほんの数十分前まで繋がっていた身体が、どんなに抱きしめても今は遠い。少しでも御堂筋翔に近付きたくて、理解したくて新開は彼を抱く。一つに慣れないと知っていながら体を繋げて薄い腹の中に意味のない精を放つ。子供も出来なければ愛も産まない愚かな行為だ。
 せめて快感に引きずられて御堂筋がこれを愛だと勘違いしてくれればいいといつも新開は思っていた。けれど初めて彼を抱いてからずっと、御堂筋は性的接触も快感も嫌悪し続けている。自分が生きるためにはこんなものはいらないのだと吐き捨てて新開の腕から逃げようとしていた。
「好きだよ」
 抱きしめた体が僅かに身じろぐ。強引に家に呼び、強引に事に及ぶ。交友関係も広く協力者の多い新開は自転車から離れた御堂筋を捕まえることは容易かった。捕まえて動けなくなるまで抱き、体が回復するまで易しく介抱してやる
。いつか彼が自分に心を開いてくれると信じて。
 性交の前にシャワーを浴びたので汗に混じって甘いボディソープの香りがした。揃いの物を使った筈なのに、御堂筋の肌からの香りはずっと甘い気がする。
「…もっかい」
 小さく呟いて首筋に唇を寄せる。身悶えていた動きが大きくなる。逃げようとする動きはしかし、疲労と眠気で緩慢過ぎた。
 唇を合わせると必死にきつく結ぶので苦笑して片手で顎の関節を圧迫してこじ開ける。舌を侵入させて歯をなぞり、薄く長い舌の裏側を味わう。息が上がり始めて閉じた瞼に熱が集まる。目じりに溜まった涙を指先で拭い、脱力した身体を仰向けて更に深く唇を貪った。すっかり抵抗を諦めた口は促されるままに開いて新開の舌を迎え入れる。小さく漏れる声に腰が震えた。
 一度精を放った場所を指で確かめてから膝を抱え上げる。足を大きく開かれて眉間に皺を寄せるがとっくに抵抗する力がなくなっている御堂筋は黙って従った。
 一度目の行為で掠れきった声で喘ぐ姿に興奮し、ごめんと早口に言った。なにを謝っているのか理解できずに見上げてくる瞳に優しくできそうにないと告げれば今さらと馬鹿にした笑いが返ってきた。ベッドの上では滅多に見れない、道の上では常にしている相手を挑発する笑みだ。耐え切れず骨ばった腰を掴んで揺さぶる。
 大きく開いた口からだらしなく垂れる真っ赤な舌。快感に溶け切っている瞳。普段は真っ白な肌が薄い赤に染まる姿全部に煽られて荒い呼吸の隙間に何度も唾を飲む。
 美味そう。頭に何度も同じ言葉が繰り返される。もっと深く、もっと近くにと願って抱きしめる。

 眠ると言うより気を失っている御堂筋の携帯電話を勝手に開いてとっくに調べてある暗証番号を打ち込む。メールの受信画面から今日彼と会う予定だった人間の名を呼びだしていけなくなったと短い文章を作って送った。
 返事が来る前に送信履歴からアドレスをコピーして全てを受信拒否設定にする。操作を終えてから、あくびをして新開はベッドに戻った。隣に恋人がいる喜びをかみしめて幸せな気持ちで目を閉じた。いい夢が見れそうだと素直にそう思った。


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