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NOVEL
どうか与えて。2 ♀
「ん…」

ぼんやりと綻びが解けるように視界が開いていく。






-------Please it gives it. -------






あぁ、オレ、気絶したんだ。

ヤケにそのコトだけはハッキリと覚えている。

まだ鈍く下腹部を締め付ける痛みを遠ざけようとシーツの中で身体を丸めて。

目が合った。

「…ユ、ユウ…!?」

オレは驚きの余り反射的に身体を起こした。
声も気配も出さずにベッドの足元側の壁にもたれられていれば誰だって驚く。
が、今はオレにとって…そこにいられては困る状況。
慌てて身体をシーツで隠しても、もうとっくに遅いコトは本能で感じている。

だって、もう、ユウは怒ってる。

「…。」

無言の圧力に耐えられず、オレは一言、呟いた。

「…ゴメン。」

「…何がだよ。」

すかさず返され、オレは戸惑いユウを見つめた。
眉間にシワを寄せて睨む顔は普段とあまり変わらないけれど、
でも…少し悲しげに見えるのはオレの気のせい?

「…黙ってた…コト。」

毎日のように顔を合わせていればいつかはバレる、そんなコトは想定してたハズで。
笑って「実は女だったんさ〜」なんて簡単に言えると思っていたし、
…嫌われて終わりだとも、思っていた。
けれどいざこの場になって…言葉が震える。
普段はなんともないユウの不機嫌顔が、恐くて仕方ない。

「“騙してた”の間違いだろ?」

「違うさ…っ!」

何度も重ねたシュミレーションでは、どんな風に罵られ軽蔑されても仕方ないと覚悟していたのに。

「…言えなかった。」

いざ本番のオレは、言い訳を重ねて、許されるコトを望んでる。

顔を伏せたオレの耳に深い溜め息だけが聞こえた。

きっと足音が遠ざかって、部屋の扉が勢い良く閉まって、
取り残されたオレはひとりで鈍痛と戦いながら落ち込むハメになるんだろう。

そう唇を噛み締め俯いていれば、近付く足音が部屋に響いた。
…近付く?

「…ッ!?」

慌てて顔を上げればユウの顔はもう目の前で。

「…ふざけんのも大概にしろよ。」

そう掃き捨てて、オレの両肩を掴み勢い良くベッドへと押し付けた。
突然のコト、そして重力に逆らえる訳もなく、オレはあっさりと仰向けにさせられて。

「…ッ!?」

加減無く握るユウの手が肩の肉を締め付け、オレは痛みに顔を歪め、悲鳴に近い声をあげた。

「…っ、コッチのセリフさ!何す…ッ!」

ガリッ!

抗議の言葉は全て発する暇も無く、痺れるような痛みが首筋を突き刺した。
気付けば視界には黒い髪を結った紐。
ユウが首に噛み付いた事実を認識した時には冷たい手が直接肌を撫でる感触を感じて。

「…ッ…離、すさ…!!」

「煩せぇ。」

「ンゥ…!」

空いた右手が口を覆い隠し、言葉を塞ぐ。
自由の利く両手を使い精一杯抵抗して押し退けようとしても、その手はビクともしなかった。

「…ふっ…ン…ァ…!」

肌を撫でていたユウの手が突然右の乳房を掴み、乱暴に揉み出して。
痛みと…そして違う感覚が入り交じり襲いかかる。
指の間から漏れた声が自分でも信じられないくらい高くてオレは戸惑う。
けれど、止まらない手の動きに変わらず悲鳴をあげるしかできなくて。

「…ん…で…っ。」

悔しくて、なのか、悲しくて、なのかわからない。
視界が滲んでく。

なんでさ、ユウ?

オレが、女だから、いけないの?

「…何、泣いてんだよ。」

頬を伝う涙を乱暴に指で擦り取られて。
鼻が重なるくらい近いユウの顔は、泣いた子供をあやすような表情で。
止まらない嗚咽を必死で堪えながら、震える指でユウのシャツを握り締めて。

「…間違えて、生まれて、きたんさ…。」

「…何を。」

「…2択しかないなら…オレはどうして“コッチ”なんさ…。」

膨らんだ胸、華奢な身体。
いくら鍛えても敵わない力。
生命を造る為に変化していく器。

それらは全て“ブックマンJr.”として必要なかった。
だから捨てていた。

“エクソシスト”として…そして、ユウとの関係の中でも、必要としたくなかった。
だから隠し続けた。

「…不服かよ。」

ユウはオレの身体を覆い被さるように、両脇に肘を着いて。
耳元で吐息と重ねて囁かれ、背筋を電気が突き抜けるような甘い感覚を覚える。

「オレの…女でいろ。」

「…んぁ…ッ…」

耳を舌で撫ぜられ、立て続けに襲いかかる快感に肩を揺らし、握り締める指に力が入る。
皺が深く刻まれたシャツを一瞥して、ユウはオレの手を取りその甲に口付けた。

「不服、かよ。」

ユウは、問いを繰り返す。

オレは、ただ何も、答えられなかった。


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