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◆青山恭平の事件簿◆
古刹殺人事件(5)-5
 一同が、ぞーっとした顔つきになった。
 成田刑事が口元を押えて言った。
「あの、芥川さん、それって、酷くありませんか?」
「そうですね。刺すだけじゃ飽き足らず、凶器を捻っている訳です。」


 岸部署長が聞いた。
「それは、ホシがガイシャを相当恨んでいた、ということですか?」
 恭平が代わりに答えた。
「そうですね。三箇所も刺していて、しかも、腹の二箇所とも、捻っている訳ですからね。」
岸部署長が、また聞いた。
「ねえ、青山さん。青山さんは剣道六段ですよね。凶器って、刺した後、そんなに簡単に捻れるものなんですかね?」
恭平が大真面目な顔をして言った。
「さあ、私はまだ、人を刺したことはないものですから。
 岸部署長も、確か同じく剣道六段ですよね。どう思われますか?」
岸部署長も大真面目な顔をして答えた。
「さあ、私もまだ、人を刺したことはないものでしてね。
 ですが以前、何処かで聞いたことがある気がしますね、かなりの技量が必要だと…」
「私もそう聞いています。普通は、刺した凶器を抜くだけでも、結構大変です。それを捻るなんて、なかなか出来ないと思います。」


 力哉が、また僕に聞いてきた。
「すみません、『人を刺す時、刺した人間がよくする怪我』って、なんでしょうか?」
今度は井上主任が、動作を交えて答えてくれた。
「ええ、それは、ナイフや包丁は日本刀みたいに『鍔(つば)』がありませんから、刺した瞬間、勢い余って、手が柄をすり抜けて、こう、刃まで行ってしまうことがあるんです。それで、犯人自身も手に怪我をする、ということがよくあるんです。」
「そうなんですか?
 じゃあ、この犯人は、その怪我もせず、腹を二箇所刺し、その都度捻って、心臓まで刺したっていうことなんですね。」
恭平が言った。
「そうだ、黒田。ホシは、冷静に、怪我も負わず、致命傷を何箇所も負わせている、ということだ。」

 恭平は、今度はみんなに向かって言った。
「今回はこの辺が、ある意味、大きなヒントになるような気がしますね。
 あとは、解剖所見の続き、犯人の身長や利き腕などと、動機とアリバイですね。聞き込みは如何でしたか?」
井上主任が、言った。
「はい、まずは、ガイシャの家族関係と近所です。」

 例によって、女刑事の成田(なりた)さんと河野(こうの)刑事が一歩前に出た。成田刑事が報告した。


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