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◆青山恭平の事件簿◆
幸福な犬(7)-4
 この言葉に、一瞬、馬鹿にされたような気がしたが、恭平がこんな時に冗談など言う訳はないだろうし、その口調がやけに重かったので、僕は次の言葉を待った。

「何にも、木一本すらないんだよ、光。ここは二階だ。一体犯人はどうやって撃ったんだと思う?あそこの、あんなに遠いマンションからか?」
 なるほど、そう聞いて僕も驚いた。

 それにしても、ラッキーは主人が撃たれたのを、ぼーっと見ていたのだろうか?

 そう思って部屋を眺め回したところ、今朝方、真ん中の四畳半の部屋の片隅にしゃがみ込んでいた筈のラッキーの姿が、どこにも見当たらなかった。
「恭平、ラッキーがいないよ!」
「そうなんだよ。俺も、さっき気がついたんだ。藤井氏に気を取られていたからね。」

 恭平は、清野氏や西村氏と何やら話していた。その時玄関が開いて、別の巡査が監察医を先導して入ってきた。医者は藤井氏の遺体に瞑目合掌すると、そのまま検死を始めた。巡査は僕達のところへ来て、報告した。
「小石川係長、聞き込み、一応終わりました。」

 係長?

「ご苦労様。どうでした?」
「はい、アパートの周りの家26件まわってきましたが、その内8件が留守でした。あとの18件は殆ど、丁度朝食を終えたあとでのことだったと言っております。みんな、銃声のような音が聞こえたと言ってますが、一番近い三宅さんの家では、音が部屋中に響くほど大きかったと言っていました。ですが近過ぎるからなのか、何か、銃声かどうかはっきりとは解らなかったそうです。」

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