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◆青山恭平の事件簿◆
幸福な犬(7)-3
 窓は南側に一つ大きな掃き出し窓があり、片側が30センチほど開いていて、狭いベランダへと続いていた。最初は、犯人はここから撃ったに違いないように僕には思われた。しかしすぐに、閉まった方のサッシのガラスの上方の、窓枠から20センチほど下の所に穴が開いていて、くもの巣状のヒビが入っていることに気づいた。

 その時凌が、そのサッシの穴を指しながら、鑑識の人達を連れて、僕達の隣に来た。
「青山さん、今月から本庁に配属の、清野鑑識課長と西村さんです。」
凌はそう言って、初老のガッシリした男と30代前半の端正な顔の男とを紹介した。
「どうも、清野(せいの)です。宜しくどうぞ。」
「どうも、青山です。こちらこそ宜しくお願いします。」
「それは、見て解りますように、弾痕です。
 西村、」
清野氏がこう言うと、
「あと、玄関のドアの横の壁に、これが埋まってました。」
と、西村氏が続けて、ビニール袋に入った物を差し出した。恭平はそのビニール袋を手に取って、じっくり見ながら言った。
「ライフルですね。」
清野氏が聞いた。
「どうしますか、BIRIシステムのデータベースで照合して貰いますか?」
「そうですね、一応そうして貰って下さい。」
「分かりました。」


 恭平はこう言った後、僕の肩に手を置いて耳元で言った。
「光、敵がまさかここまでやるとは思わなかったよ。俺は、少し見縊(みくび)っていたようだ。」
 それから恭平は、ちらと外を見て、突然驚いた様子で小声を上げた。
「どうしたんだい、恭平?」
「光、見てみろよ!」

 僕は恭平の指差す方を見た。何も、窓の外には、それこそ何にもなかった。あるのは空と雲だけである。あとは、遠くにマンションやらビルやらが霞んで見えるだけだ。

「一体どうしたんだい、何にもないじゃないか。」
 僕はてっきり、恭平が幽霊(この場合、藤井氏の)でも見たのかと思ったが、何にも見えないので、安心してこう言った。
「そうだ、光、何にもないんだよ。」

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