[携帯モード] [URL送信]

◆青山恭平の事件簿◆
古刹殺人事件(3)-7
 僕は月子を見た。恭平の傍にピッタリと寄り添って、恐々と遺体を見ている。目には、また涙が浮かんでいた。
「叔母様…」
恭平が聞いた。
「間違いないのかい?」
「ええ、大叔母の立川菜穂子(たてかわ・なおこ)です。間違いありません。」
「月子ちゃん!」
その時、男の声がしたので、その方を向いた。
「正和叔父様!」

 叔父様と呼ばれた男は、背は175pくらいである。遺体の人と同年代くらいだろうから、その年の割にはかなり高い方だ。矍鑠(かくしゃく)としていて、姿勢がよく、どことなく月子のお父さんの、御手洗金三氏に似ている気がする。


 彼はテープをくぐって入ってきた。
「叔父様、お仕事は?」
何とこの人は、この年になっても、まだ働いているようだ。
「ああ、慌てて戻ってきたよ。」
そう言って正和氏は遺体を見ると、叫んだ。
「菜穂子!菜穂子!」
恭平が横から口を出した。
「すみません、今、検死中ですから、お静かに願います。」

「あ、すいません。
 月子ちゃん、一体どういう訳なんだい?」
「あの、私も来たばかりで、まだ…
 あ、青山さん、紹介します。私の大叔父で菜穂子の夫のまさかずです。
 叔父様、私の上司で、あおやまさんです。」
「宜しく、青山です。」
「こちらこそ、月子がいつもお世話になっております。
 上司というと…月子ちゃん、先生だよね?」
「いえ、仕事、変わったんです。」
「え、何に?」
「それはまた今度。」


 月子は、自分が恭平の助手と言うことは出来ないので、大叔父との会話をそれとなく打ち切った。


 恭平が月子に言った。
「月子、警察の事情聴取は、こちらの叔父さんにお任せするといい。」
「はい、分かりました、青山さん。」
それから恭平は、月子にやさしく小声で言った。
「月子、他人に言う時は、たとえ上司でも『青山』だけでいいんだ。『さん』はいらない。」
月子は頬を染めて言った。
「ええ、そうなんですけど、私、青山先生を呼び捨てになんか出来なくて…」
恭平は苦笑した。
「そうか。じゃあ、追々練習してくれたまえ。」

[*前n][次n#]

27/176ページ


[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!