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◆青山恭平の事件簿◆
幸福な犬(6)-5
「だけど、エサが与えられていないからって、奥さんがいないと言い切れるのかな?」
「俺はラッキーと遊びながら、キッチンの方を見たんだ。荒れ放題だったよ。灰皿も、きったなかっただろ。『奥様』がいて、あんなことになると思うかい、光?」
「さあ、どうだろう?僕は結婚したことないから、分からないよ。」
「俺はしてたけど、すっごく、きれいにしてたよ。」

 えっ、ちょ…ちょっと待ってくれ、それって別居してるってことかい?

 と、物凄く気になったが、聞く訳にもいかず、なぜショックを受けたのか自分でも解らないまま、僕は気丈に言った。
「だって、留守だって言ってたよ、藤井氏は?」
「しかし、彼の話によると、少なくとも今朝早くには、いたことになるんだけどね。」
「そういえばそうだ。」
「それに、あとの二匹の犬はどうしたんだ?『奥さん』が、朝、まだスーパーも開かないくらい早くから、犬二匹と護衛二人引き連れて、コンビニに『お買い物』か?」

 恭平は、最初のうちは微笑んでいたが、もう真顔だった。

「例の護衛の二人は、藤井氏の家に行く途中でマカれたらしいよ。あの男、元々、胡散臭(うさんくさ)い気はしたが、案外大物かも知れないね。」
 恭平は煙草ケースから一本取り出して火をつけると、深々と吸い込んだ。

 数秒後、白い煙を吐きながら言った。
「ラッキーの足が不自由なのは、病気や怪我じゃない。故意のものだ。ラッキーの右前足の付け根には、何かが埋まってるんだ。」
「何だって!?」
僕は驚いて、少し大声をあげた。
「何かって、この展開だと…」
「ん。はっきりとは言えないけど、恐らく…」
彼はこう言って口をつぐんでしまった。
 そして、しばらくして、確信したように言った。
「『遥かなる影』だろうな、やっぱ。」
「やっぱ、そうなのか!」
恭平はコクリとうなづいた。

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