[携帯モード] [URL送信]

◆青山恭平の事件簿◆
幸福な犬(6)-3
 凌は少し困ったような表情をした。
「すみませんでした。まさか、こんなに厄介になるとは思わなかったものですから、所轄と私だけで十分だと思ったんです。
 ですが、新聞は詳しく読まれたんでしょう?」
「それは、一応、目を通してはいるが、現場の場所と犯行時間ぐらいしか、解らないよ。」
「そこを何とか、押して頼みますよ。解決に力を貸して下さいよ。」

 さっきの皮肉屋の調子はどこへやら、今度は哀願調である。

「ね、青山さん、詳しい資料は提供致しますから、何とかお願いしますよ。ね、せ・ん・ぱ・い?」
 凌はこう言うと、冗談交じりにウインクをした。恭平の口元が、少しニヤッとした。
「お前さんに『先輩』って言われると、どうも弱くてなぁ…
 だが、俺は今、それどころじゃない。依頼されてる事件があるんだ。先の依頼をまず優先するのが、職業柄、当たり前だろ?」

 これは、恭平のやつ、凌をからかってるな。

 僕はそう思った。というのは、あの「犬事件」とこの殺人事件とは少なからず何らかの関連がある筈だし、第一、恭平自身、資料を見たいと言っていたのである。

「しかし、凌、お前さんの頼みなら仕方ないなぁ、協力しましょう。
 で、資料はいつ届けてくれるんだ?」
「はい、今、持ってます。」

 警部補は、胸元から二つ折りにした書類の写しを出した。かみそりのような目は相変わらず光っているが、内心ほっとしているのだろう、口元から頬にかけて、微かに笑みが浮かんでいる。

「じゃ、宜しくお願いしましたよ、青山さん。」
 凌はこう言って出ていった。

[*前n][次n#]

30/80ページ


[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!