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◆青山恭平の事件簿◆
幸福な犬(6)-2
「宜しく、小石川警部補。」
「こちらこそ宜しくお願いします、芥川さん。凌、でいいですよ。」
「ええっ?宜しく、りょ…凌。僕も、光でいいです。」
 凌はクスッと笑うと、三人掛けのソファに腰掛けた。
「こういうことはよくあるんだよ、光。ハチはとてもよく気がつく人なんだが、来客を部屋に案内したことを、必ずしも俺に伝えてくれるとは限らないんだよ。」
 恭平は、こう言って苦笑した。彼は、三人掛けのソファに座っている凌の横に僕を座らせて、自分も肘掛ソファに座った。

 その時、
「青山さん、お客さん、案内しときました。朝早くから何人も、大変ですね、探偵さんも。」
そう言いながら、噂の主のハチさんが、アイスコーヒーのグラスを二つトレイに載せて、入ってきた。ハチさんは、グラスをテーブルの上に置き、一つを僕に、もう一つを恭平の前に置いて、あー忙しい忙しい、とぶつぶつ言いながら出ていった。

 恭平は一口飲んで、凌に聞いた。
「で、警視庁捜査一課の警部補殿が、今日は何の御用事でございましょうか?」

 僕はといえば、なぜ、ハチさんが凌にグラスを出さないのか、わざとそうしているのか、気がつかないのか、いや、気づかない筈はない、と下らないかも知れないが気になってしょうがなかった。

「いや、用件というほどのことでもないんですがね…」
 凌は自分のグラスがないことを気にも留めずに続けた。
「三日前の殺人事件、当然、ご存知ですよね、青山さん。あの事件も私の担当なんですがね、とんと、解らないのですよ…あ、いや、うぉっほん…」

 警部補は、つい「解らない」と本音を吐いてしまったので、失言とばかり慌てて口を押さえた。

 が、この際、恥や外聞よりも事件解決に、と思ったのか案外率直に切り出した。
「あの殺人事件を、あなたはどうお考えですか、青山さん?」
「そう聞かれても困るよ、凌。俺はあの事件は、新聞で読んだきりなんだぜ。何しろ、誰〜も現場検証に連れてってくれなかったんでねー。現場さえ見てないんだ。」
恭平はこう、凌に嫌味を言った。

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