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◆青山恭平の事件簿◆
第6章 もう一人の依頼人-1
第6章 もう一人の依頼人


 1時間前、僕らが恭平の部屋を出る時、彼は確かに玄関に鍵をかけた。だから今度も、鍵を開けようと恭平がキーを差し込んだのだが、またもや彼は眉をピクっとさせた。

 恭平は上着を静かに脱ぐと、ドアをガチャっと開けて、つまり鍵は開いていたのだが、上着だけ部屋の中に放り込み、自分はあとから部屋の右の方に、倒れ込むように入った。その右手には、まぎれもなくピストルが握られている。

「これはこれは、ご挨拶ですな、青山恭平さん。あなたは、来客にはいつもそういうお出迎えをなさるのですかな。もしくは、ご自分の叡智ならびに素晴らしい腕前をご披露なさりたいのですか。それとも、銃刀法違反で逮捕して欲しいのですか。」
 その男は、こう皮肉たっぷりに言った。

 背は僕より高く、177〜178pありそうだ。太い眉、かみそりのように鋭い目、形の良い鼻、穏やかな口元、がっしりした体躯(たいく)は、アメリカの名優トム・クルーズを彷彿させる。かなり『いい男』である。話す声も低めで渋く、いい声だ。

「なんだ、お前さんか。何度も言うが、免許は持ってるよ。」

 恭平はこう言うと、ニヤニヤして立ち上がり、スーツの上着を拾い上げて埃をはらった。この辺の仕草は、先ほどと全く同じだ。それから僕の方を振り返ると、言った。

「光、今日は君に紹介する人が多いね。朝っぱらから二人もだ。」
 そしてその、シブい、ハード・ボイルドチックな男の方へ僕をひっぱっていった。
「警視庁捜査一課のこいしかわ・りょう警部補。大学の剣道部の一つ後輩なんだ。
 凌、友人の芥川 光君。『光』って書いて『あきら』って読むそうだ。俺と同い年でね。彼も俺達と同じく東大だ、但し、医学部だけどね。」

 恭平の一年後輩だって?じゃあ、僕より年下な訳?嘘だろ?

 そう、思わず声に出してしまいそうなほど、小石川警部補は落ち着いていて、大人っぽかった。気のせいか警部補は、最初僕のことを見て驚いたような顔をしたのだが、すぐにニコッと好意的な視線を投げて、右手を差し出してきた。僕も右手を出して、明るく握手した。

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