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◆青山恭平の事件簿◆
幸福な犬(1)-4
 恭平さんのマンションに飛び込むと、オートロックの扉の前で立ち往生した。

 しまった、部屋番号を聞いてくるの忘れた。

 管理人室の小窓にはカーテンが引かれている。いつもの管理人さんはいないようだ。

 仕方ない、集合ポストの表札を見てこよう…

 と思ったその時、なぜかガチャっとロックが外れた。ラッキー!とばかりそのまま中に入り、エレベーターを二階で降りると、一番近い部屋の表札が「青山」だった。
「ここだな…」
インターホンを押す。
「どうぞ、芥川さん。」
恭平さんらしい、低い、良い声が聞こえた。僕は中に入った。



 玄関のドアを開けると、いきなり、20畳はありそうな驚くほど広いリビングになっていて、東側にはアコーディオン・カーテンがかかり、キッチンへと続く。
 なんと、リビングは靴のまま上がれる作りになっていて、中央に三人掛けのソファと、その向かいに肘掛ソファが、なぜか一つだけ、あった。立派な長い廊下にはドアが沢山ある。ドアの数から考えると、部屋数も多く、軽く100uはありそうだ。

 部屋に入ると、すぐに僕は言った。
「恭平さん、どうして…」
恭平さんは僕にソファをすすめると、自分もその肘掛ソファに座った。
「こうなる筋合いなんです。まあ、かけて下さい。
 あ、たばこを吸っても宜しいですか?」
彼はにこにこしてたばこを取り出した。

 僕は途惑いながらも、内心では、彼の頭のいいことを推理し、しかもそれが当たったのでワクワクしていた。

「ええ、どうぞ。
 あなたは何でも解るんですね、恭平さん。本、ありがとうございます。でもどうして…?」
 恭平さんはクスクス笑いながら、言った。
「あの後、もう一度通ったら、ビルの窓のところにあったんですよ。見覚えがあったし、雨にでも降られたら終わりだから、取り敢えず持ってきました、のんびり屋の芥川さんのだってね。」
「のんびり屋はひどいですよ。」
僕も笑いながら言った。これをきっかけに、僕達はお互いに親しみ易くなった。
「ところで恭平さん、その『芥川さん』というのは、よして下さい。何だか申し訳ないです。」
「じゃあ、何てお呼びしましょうか?」
僕は彼を年上と思っていたので、こう言った。
「僕は年下ですから、そのまんま、『光(あきら)』でいいです。」
「…じゃ、これからそう呼びましょう。」
恭平さんは、こう言ってクスッと笑った。

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