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◆青山恭平の事件簿◆
第8章 苦しい恋-1
第8章 苦しい恋


「あなたも本当は、分かっていらっしゃるんでしょう?」
 恭清氏の言葉が頭の中でこだまする。

 本当なんだろうか?

 僕達は恭清氏の寝室に入ってドアを閉めた。凌は、いつもだったら、「良かったですね」とか言って、からかいそうなものなのに、何も言わない。そんな凌の沈黙は、こんな時は却って重い。


 僕はドアに寄りかかって言った。
「ねえ、凌…」
凌は、僕の向かいに立って答えた。
「はい。」
「どう思う?」
「ええ。恭清さんはお医者様ですし、親御さんですから、やはり鋭いですね。」
「え、どういうこと?」
「私は、ずーっと前から、分かっていましたよ。」
「え、嘘。」
「いえ、分かっていたというか、感じていたというか…」
「僕が引っ越したのが悪かったのかな?」
「どの道、助手をされてるじゃないですか。
 それに、元々、あなたのお顔の造形は恭平さんの好みですし、光さんは性格が優しいし、何より、光さんご自身が恭平さんを好きだから通じるんじゃないですか。」
「ぼ…僕は別に…」
「よく仰いますよ。恭平さんに冷たくされたら、必ず私を頼ってくるじゃないですか。好きな証拠ですよ。」
僕は赤くなった。
「そ…そうなの?」
凌は苦笑した。
「困りましたね。他人の心は冷静に正しく分析されるのに、ご自分の気持ちが分からないんですか?」
「だって…」

 僕はまた目に涙を溜めていたらしく、凌がハンカチを出してくれた。僕は慌てて拭いた。

 凌が、クスッと笑って言った。
「恭平さんに『千載一遇』って言われた時も、そうやって無意識に泣いてましたね。恭平さんの学生服を見て、変態的に感動してましたね。何ともなかったら、そんなことで泣きますか?」
「ちょっ、凌、変態はないだろ。僕は恭平に依存してるだけで…ほら、『封印』でも書いただろ?」
「そうでしょうか?私には詭弁に聞こえますよ。」
「…」
「恭平さんが時々あなたにエッチなジョークを言ったり、私を執拗にからかったりするのは、それこそ、ご自分の気持ちの裏返しなんですよ。少なくとも、私はそう感じました。」
「ああ、だから凌、徹底的には言い返さないのか。
 でも、凌、何でそこまで分かるの?」
「それは…」

 凌は答えなかった。

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