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◆青山恭平の事件簿◆
第5章 昼食会-1
第5章 昼食会


 一階の東の端から3つ目のドアが食堂だった。食堂に入ると、裕紀さんも恭清お父さんも、席に付いていた。
「お父さん、遅くなってすみません。」
恭平が、食堂に入るや否や、謝った。

 テーブルは、左右に4人ずつ、正面とその向かいに1人ずつの10人がけだった。奥の正面が恭清氏、向かって右側の一番奥に裕紀さん、向かって左側に三人分の席が用意されている。凌と僕は、準備されている席のうち、裕紀さんからも恭清氏からも遠い席を奪い合った。結果、恭平、凌、僕の順で座った。

 フォークやスプーンが沢山置いてあるから、昼からコース料理らしい。凌の言う通り、ギャルソンが二人いる。僕達が席に着くと、給仕が始まった。最初にオードブルが運ばれてきた。


 恭清氏が恭平に言った。
「いや、構わんぞ。裕美に会ってたんだってな。自分の部屋には行ったか?」
恭平はオードブルを一口食べて、答えた。
「あ、はい。」
「ずーっと、そのままにしてあるんだぞ。いつでも帰って来られるようにな。
 ところで恭平、君はもう、再婚はしないのか?」
「あ、いえ、まだ…」
恭平の弱々しい答えがもどかしくて、僕はつい言った。
「あ、します、もうすぐ…」
「え、本当ですか?」
恭清氏は驚いた。恭平も驚いた。
「おい、光。何を言い出すんだよ?」
「だって、そのために今日来たんじゃないか。」
恭平は小声で言った。
「光、頼むよ。勘弁してくれよ。」
「恭平、何をこそこそ話してるんだ、聞こえないぞ。」
「いえ、お父さん、何でもありません。」
裕紀さんが、クスッと笑って言った。
「芥川さん、あなたは面白い方ですね。物静かなようで、言いたいことも聞きたいこともはっきり仰る。恭平にも見習って欲しいですね。」
「いえ、あの、恭平さんも普段はそうなんです。今日は久々にご家族にお会いして、あがってるみたいなんです。」


 どうして、僕はこうなんだろう。静かにしていよう、イメージを崩さないようにしよう、といつも考えてはいるのだが、どこかの党首みたいに、自分で壊してしまう。


 裕紀さんは多分幻滅しているのだろう。僕は割りと他人になんて思われても気にならない性分だが、この裕紀さんに悪く思われるのは、何となく辛かった。

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