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◆青山恭平の事件簿◆
第3章 青山家の人々-1
第3章 青山家の人々


 僕は自分のパーキングからクラウンを出してきた。

 若いのにクラウンなんか嫌なのだが、母には『お医者様はクラウン』という断固としたイメージがあるらしく、買う羽目になった。


 僕はメイン・ストリートを行く安全派なのだが、凌は普段パトカーばかり乗っているので、色んな細かい道を知っている。折角のカーナビも、凌の前では形無しである。凌の指示通りに行ったら、品川に着くまで、およそ今まで通ったことのないような道ばかり走った。お陰でホリデー・ドライバーさんに遭遇しないですんで、早く着けた。家を出るのが20分遅かったが、ちゃんと10時前に到着した。

 僕は病院のパーキングに車を停めて、感心して言った。
「凄いね、凌、見直したよ。」
凌はクスッと笑った。
 凌と僕は車を降りたが、恭平は愚図愚図してなかなか降りない。
「青山さん、いい加減、覚悟決めて下さいよ。」
「はいはい…」
恭平は渋々降りてきた。


 病院と、道路を挟んで向かいに大邸宅があり、そこが恭平の実家である。これでは確かに恭平のマンションは「狭苦しいところ」である。こんなところで育ったから、あんなに大らかで物事に頓着しなくなったのか、と思う。


 門構えからして豪華で、車用の門の隣に人間用の通用門が並んでいる。
「恭平、先陣切ってくれよ。」
僕が言うと、恭平は嫌々、インタホンを押した。
「はい。」
中年の女性の声が答えた。
「あ、俺だけど…」
「まあ!」
その声はそう言ったきり、切れた。

 程なく、通用門の鍵がガチャっと外れた。僕達は中に入り、恭平を先頭にして、玄関までの長い距離を歩いていった。玄関に入ると、上がり框(あがりかまち)に50代くらいの女性が立っていた。

 背は165pくらいだろうか、その年代にしては高い方だろう。黒っぽいスーツに身を包み、髪は後ろで一つに束ね、金縁の眼鏡をかけている。が、鼻が高く、目も綺麗なので、眼鏡を外せばかなりの美人である。だが、声の低さに、何とも恐ろしげな威厳を感じた。演歌のなんとかのナレーション風である。

「お帰りなさいませ、恭平坊ちゃま。」
 恭平は、危うく玄関に倒れるところだった。
「ただいま、成澤さん。お久しぶりです。」
「ええ、ええ、お久しぶりですとも。さあさあ、お上がり下さいませ。」

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