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◆青山恭平の事件簿◆
古刹殺人事件(3)-6
「こちらこそ。
 あなたみたいな方がいらっしゃると、殺伐とした現場が明るくなって、いいですな。」

 驚いた。藤社先生でも、こんなこと仰るんだ。

 月子は何て返していいか分からず、頬を染めて恭平や凌や僕を見た。恭平がクスッと笑って彼女の耳元で何か言うと、彼女は藤社先生に言った。
「あの、ありがとうございます。」

 鑑識さん達が帰っていった。
「じゃ、始めるか。」
藤社先生はこう仰ると、遺体の方に行き、手を合わせて瞑目合掌(めいもくがっしょう)してから、検死を始めた。2時40分である。

 僕達も、作業を開始した。
 恭平と月子は楽しそうに話していて、なんとなく、いずみさんと話している時の恭平を思い出した。恭平は、こういう男っぽい女性が好みなのかも知れない(いずみさん、月子、ごめん!)。
 そういえば、二人とも法学部出身である。


 恭平はそのまま、初めての現場でビビッているだろう月子にずっとついている。それで凌と僕の二人は、自然に恭平達とは別行動になった。

 凌があちこち見ながら、ニヤニヤして言った。
「光さん、気が気じゃありませんね、色々な意味で。」
僕は赤くなって言った。
「凌、また君はそんなことを。もし、あの二人が上手くいったら、嬉しいじゃないか。元々僕の狙いはそれなんだし。」
「ですが、『シャーロック・ホームズ』では、結婚したのはワトスン氏の方でしたよね。」
「そんなの、関係ない!」
「流行語大賞ですね。」

 僕は無視して、死体の方に行った。凌も付いてきたので、二人で瞑目合掌した。藤社先生が検死をされているので、少し遠巻きに見た。

 遺体は、頭を北にして、仰向けに倒れていた。殆ど総白髪に近い70〜80歳位の老女で、中肉よりは少しふっくらしている感がある。背は160pくらいだろうか、このお年では大きい方だろう。年の割には、ピンクのセーターに同系色の結構厚手のカーディガンを羽織り、茶のスラックスという若向きの服装だ。厚手の靴下に流行のブランドのスニーカーを履いていて、その靴の底には土が付いている。胸や腹を刺されていた。凶器は抜いてあり、傍に落ちていたそうだ。荷物は元々なかったようである。勿論、犯人が持っていったのかも知れないが。

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