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◆青山恭平の事件簿◆
古刹殺人事件(3)-2
 大寿寺は、笹目通りから脇道の大寿寺通りを少し入ったところにあり、東には斎場が、南にはその大寿寺通りを挟んで大きな病院が控えている。西には膨大な数のお墓を抱えており、かなり立派なお寺である。南大門の隣にあるパーキングには、既に来ていた所轄の車が三台もあった。あとで遺体を搬送するためであろうか、一台はワゴン車である。凌も、そこに覆面を停めた。

 車を降りて僕は言った。
「凌、君の運転は相変わらず見事だね、ある意味。」
「どうも、お褒めに預かり、恭悦至極に存じます。」
凌はしゃあしゃあと言った
「ったく、お前さんは…」
恭平がクスクス笑いながら言った。
「ところで、凌。ここはどこの管轄だ、石神井東署か?」
「いえ、光ヶ丘西署です。」
「え、ここもそうなのか?」
「はい。高野台は全部、光ヶ丘西署です。」
「そうか。すると…」
 僕達は、現場に向かって歩き出した。



 持國天、広目天、増長天、多聞天の四天王の見事な像に見張られた南大門を潜(くぐ)ると、右手に鐘突き堂がある。沢山の菩薩様に観られながら石畳の参道を行くと、法隆寺の夢殿によく似た建物が左手に見えた。右手には東門へ続く、やはり石畳の長い参道があり、笹目通りに通じている。



 境内には沢山の公孫樹(イチョウ)が葉を落とし、石畳以外の土の地面は、見渡す限り金色(こんじき)に染まっている。



 正面に本堂があり、左手から回って奥に行くと、寺の北側に続く。北側には弘法大師霊場の御影堂があり、その裏手に回ると寺の最奥で、北門へと続く。北門は縦格子の鉄の引き戸だが、開くことはないという。その北門の手前に、沢山の石仏(せきぶつ)が並んでいる。

 南大門を入ってから、かなりの距離である。そこに、規制線(立入禁止の黄色いテープ)が張り巡らされていた。その周りに野次馬達があふれ、制服が、彼らを制止しながら立っていた。近づくと、その野次馬の中に知っている顔があった。

 なんでここにいるんだ?そんな野次馬根性を持つ人には思えないのだが。

 僕は思わず小声で叫んだ。
「月子!」
月子がこちらを向いた。彼女は目に涙を一杯溜めていた。そして小声で「あっ」と叫ぶと、こちらに走ってきた。そしてそのまま、恭平の胸に飛び込んだ。

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