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◆青山恭平の事件簿◆
古刹殺人事件(2)-2
 僕はテーブルにあった恭平の煙草ケースから一本出して火をつけて、深く吸い込んで吐いてから、言った。

「恭平さ。品川で僕が君に、『結婚してる時、愛人いたのか』って聞いたら、いないって言ってたけど、それは女の愛人のことで、男の愛人はいたんじゃないの?」
 恭平は飄々と言った。
「何言い出すんだよ、光。だから、ふざけてただけだって言ってるじゃない。ただ俺は、凌に白状しろって迫っただけだよ。」
「え、何を?」
「いや、君を抱いただろって。」
これには僕も赤くなった。
「んな訳、ないだろ。話の矛先をこっちに向けて、自己を正当化するなよ。」
恭平がまた飄々(ひょうひょう)と言った。
「さあね。
 まあ、とにかく冗談なんだから、本当にはしやしないさ。
 仮にしたとして、高がキスくらいで、何そんなに目くじら立ててるんだよ?」

 僕は物凄く腹が立ってきた。

「ねえ、恭平。『人間は一生に何人の人と交わるかで天国行きか地獄行きか決まる』って、僕はいつも言ってるよね。」
「ああ。
 でも、それって、キスだけでも駄目なの?」
「当たり前だよ。本来なら、誰か一人決まった相手がいたら、それ以外の人は心の中で思うだけでも罪になり、狭き門は益々狭くなっちゃうんだよ。」
「だって俺、今、決まった相手なんていないもの。」
「なんだよ、恭平。一昨日君が僕に『君のためなら死ねる』って言ってくれたのは、嘘だったの?」
「あれ、そんなこと言ったっけ?」
「青山さん、またそんな言い方を!」
「まあ、確かに、光は大事な助手だからね。『助手あっての俺』だし、いざとなったら『助手のために死ねる』ぜ。」
 僕はショックで目の前が真っ暗になった。

 やっぱり恭平は、噂通りのプレイボーイなんだ。誰にでもすぐ『君のためなら死ねる』と言ったり、見境なくキスしたりするんだ。真に受けて、あれだけ喜んで、そして苦しんだ僕が馬鹿だったんだ。

 しかし僕は、これで品川での決意が無駄にならないと思い、ホッとした。そしてこれ幸いと気丈に言った。
「なんだ、やっぱり冗談だったんだ、良かった。そうは思ってたけど、万一マジだったらどうしようと思ってた。」

 僕は、また一口吸い込んだ。そして、ふうっと長く煙を吐くと、クスクス笑って言ってやった。

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