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◆青山恭平の事件簿◆
幸福な犬(5)-2
 割と広い間取りだった。キッチンのほかに、この部屋をいれて二部屋ある。アパートとしては上等だろう。

 なるほど、おとなしそうな犬である。ラッキーらしき犬が、三間あるうちの、真ん中の部屋の隅に寝そべっていた。我々が入っていったのに、吠えもせず、目を片方だけ開けて、ただじっと、二人をかわるがわる見ていた。

 藤井氏は驚いたような顔を一瞬したが、すぐににっこりと笑顔を作って、僕達二人を南側の部屋の中央のテーブルへ案内した。意外と趣味がいいのか、アンティークな電話と時計が置いてあった。
「これはこれは、青山さんにその助手の…」
「芥川です。」
僕は手早く答えた。
「芥川さん、よくいらっしゃいました。生憎、家内は留守ですが、すぐ帰ると思います。
 ところで、わざわざお二人揃って、私の護衛に来て下さったんですか?それとも何か特別な用事でも?それにしても、よくここがお分かりになりましたね。」

 いつでもどこでも、実によく喋る男である。それも、嘘だか本当だか、信じて良いのか駄目なのか、頓(とん)と分かりにくい。だが、彼の言うところの「家内」が今いないのは、本当らしかった。

「いや、ちょっと、ラッキー君にお目にかかろうと思いましてね。あの後、すぐに走って追いかけてきたんですよ。」
 なかなかどうして、我らが名探偵も、嘘がお上手だ。
「あれからすぐですって?」
藤井氏は、ぶるっと震えた。

 僕はなぜか、この男の一挙手一投足が気にかかって仕方がなかった。

 恭平はにっこりしながら、胸元に手を入れて言った。
「ええ。
 ところで、たばこを吸っても宜しいですか?」
「え、ああ、構いません、どうぞ。」
男はキッチンからアルミの灰皿を持ってきて、テーブルに置いた。その灰皿は、吸殻を捨ててはあるが、やけに汚かった。

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