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◆青山恭平の事件簿◆
幸福な犬(4)-2
 恭平は静かに話し始めた。
「初めに、三年前、君が東京にいなかった時のことから話しておこう。
 当時、俺はまだ大学院を出て間もない、26になったばかりの、いわば若造だった。若い探偵などあてにならんという訳で、仕事も月に1〜2件来るくらいなものだった。四年前まで向かいに住んでた君が俺のことを知らなかったのも当然なほど、俺は当時、無名だった。」

 恭平は懐かしそうに目を閉じて、その無名時代の話を続けた。

「そんな俺のところに、ふと持ち込まれたのが、これから話す事件なんだ。
 警察は単なる物取りの犯行だとしか扱ってくれないってんで、俺のところに回ってきたんだが、恵比寿智康(えびすともやす)卿、君も名前は聞いたことがあるだろう、EBISUコンツェルンの総裁さ。
 物凄い大男でね、俺くらいデカいんだ。父親が亡くなって、まだ40そこそこの若さで総裁に納まったんだが、なかなかのやり手でね。代替わりしても、その財力は変わらずだ。その家の家宝に『遥かなる影』という、物凄いダイヤがあったんだが、そのダイヤが盗まれてね。
 その時、俺が目をつけたのが、この写真の男、『HIMURO』だ。だが、状況証拠だけで、どうしても物的証拠が出てこない。結局、証拠不十分で奴は不起訴になり、釈放された。その後、犯人は捕まらないし『遥かなる影』も出てこなかった。
 俺は何も出来ないままだった。青山恭平ももう終わりだ、って思ったよ。いわゆる迷宮入りってやつさ。」

 僕は、彼の真剣な表情を見て、恐る恐る言った。
「『遥かなる影』事件のことは知ってるよ。僕のいた研究室でも、しばらく話題になってたから。」
「ねえ、光。俺は、今度の『犬事件』と三年前の『遥かなる影事件』は、何かしら関係がありそうな、いや、絶対あるって、そう思ってるんだ。」
「何か、確実な手がかりでも?」
「いや、そういう訳ではないが…」

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