[携帯モード] [URL送信]

◆青山恭平の事件簿◆
幸福な犬(2)-6
 知り合ってから僅か二日、正確には16時間ほど、しか経っていないのに、こんなことを唐突に言ったので、彼はいささか驚いたようである。僕の方は、彼は有名人なのでよく知っているから、一向に構わないのだが。
「悪いが、昨日も言ったように、俺は助手はいらないんだ。というより、いて欲しくないんだ。」
「大丈夫だよ、恭平。僕は君のために死ねるような男じゃないもの。」

 実際は、もし助手になることが出来て、恭平のために死ぬのなら、それはそれで本望だ、と僕は思っていた。が、こう言った方が彼がOKしてくれるような気がして、わざとこう言った。

 恭平は立ち止まって僕の顔をじっと見ていたが、やがてクスクス笑い出した。
 そして言った。
「フフ…面白い人だな、君は。
 じゃ、今度依頼が来た時、試しに一緒に駆けずり回ってみるかい?」
これは、OKということだな、と僕は咄嗟(とっさ)に思った。
「喜んで!宜しく頼みます!」
僕は大袈裟に頭を下げた。彼はクスクス笑っていた。


 流石に恭平である。3つしか買わなかった僕は、マンションの100メートル以上手前でパンがなくなったが、恭平は、大体10メートル手前で4つ目のパンを食べ終わった。

 それにしても、恭平は本当に歩くのが速い。僕は一般的には決して小さい方ではないとは思うのだが、一緒に合わせて歩くと貧血をおこしそうになる。実際、パンでもかじりながら歩いていなかったら、僕は倒れていたかも知れない。


「あがっていくかい、光。面白い資料を見てみないか。」
「え、いいの?」

 東京を留守にしていた四年間に、この辺りはどんなに変わっているだろうと期待していた僕にとって、高架化された駅やその周囲に軒並み建っているビル群は、予想をはるかに越えていた。散歩しながらこんなことを考えていて、何となくこのまま帰りたくなかった僕は、この恭平の申し出をすんなり受け入れた。

 あたりは、ようやく家々の窓が開き始め、朝もやも晴れてきた。時計は丁度、7時を指していた。

[*前n][次n#]

13/80ページ


[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!