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◆青山恭平の事件簿◆
幸福な犬(2)-3
「なんだ、そうだったのか。
 でも、何で知ってるんだろう?僕は誰にも話していないのに…」
「東大出は知らないうちに知られてるし、何かと噂になるからね。」

 神秘的な名推理がそんな偶然の賜物だった、という種明かしを聞いて、僕は何だかがっかりした。

「それから、ハチのことなんだけど、幼馴染が何で敬語なの?」
 こう聞くと、恭平はまたクスッと笑って言った。
「ああ、俺よりも年上なのに、なぜか敬語で、名前もさんづけなんだ。」
「恭平は背が高いからね。僕だって、君は僕より4〜5歳年上だと思ったもの。」
僕は一人で勝手に納得した。
「あの人、年上なのか。じゃあ、『ハチさん』だな。
 ハチさんは、助手なの?」
「いや、お茶を入れてくれたり、郵便物の整理や部屋の掃除とかをしてくれてる。俺もつい甘えてしまってるが、基本的に助手は使わないんだ。」
「あれ、以前、助手いなかったっけ?確か沢渡さんて…」

 僕はホームズフリークであると共に青山恭平フリークでもあった。だから当然、恭平のことも新聞に載るたびに読んでいた。だから、彼に助手がいることも、そしてその名前をも知っていた。

 しかし、僕が何気なく言った言葉は、突然彼の顔を暗くした。
「彼はいい人だったよ。俺と同期だったんだ。本当に良くやってくれた。」
「辞めたの?」
 僕は、恭平が使った過去形に対して、そうとしか思わなかったので、そう聞いた。
「彼は亡くなったんだ、俺を庇って。二年前にね…
 俺はあれから助手を使うのを止めたんだ。俺一人なら、死ぬのも俺一人ですむ。」

 そうか、一つだけのソファには、そういう意味が込められていたのか。

「そうだったんだ、すまない…」

 僕は謝りながら、同時にどこかでがっかりしていた。もしかすると無意識のうちに、彼の助手になりたい、と思っていたのかも知れない。

「でも、…絶対に?」
 僕は聞いた。
「たとえ、どんなに、君の助手になりたいという奴が現れても?君のためなら死んでもいい、って奴が現れても?」
「ああ、恐らくね。」
「恐らく、か…」

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