[携帯モード] [URL送信]

◆青山恭平の事件簿◆
幸福な犬(7)-5
「小石川係長、出ました。」

 先ほどまで何かを測ったり、パソコンで計算したりしていた鑑識の清野氏達が呼んだ。

「射入角、出ました。6時の方角、6度です。」
「6度?それだと、殆ど水平じゃないですか。」
 凌が目を見開いた。恭平も僕も清野氏達も、一斉に6時の方角を見やった。さっき恭平が言ったように、何もない。が、200メートルくらい先に6〜7階建てのビルが見えた。
「あそこですか?」
恭平が指さすと、鑑識の人達が何やら測って調べ始める。
 西村氏が言った。
「は…はい、確かにあのビルの方向ですが、該当地点は北側の7階の通路です。朝とはいえ、そんな目立つ場所でライフル狙撃なんてしますでしょうか?」


 恭平はその場を離れて、部屋をあちこち歩き始めた。
 家具はいたって少なく、真ん中の四畳半の部屋には何にもなかった。多分、寝る部屋なのだろう。主だった物は、南の六畳間のテーブルと椅子、その部屋の南東の壁側にある背の低い多少横長のサイドボード、そしてその上に並べて置かれているテレビとCDコンポくらいだった。
 テーブルの横に置かれたマガジンラックは、部屋自体や他の家具類と比べて随分とご立派で、新聞や雑誌がきちんと入れられていた。藤井氏は見かけによらず、社会情勢に対して勉強家だったようである。

 恭平は手袋をした手でCDコンポを少しいじっていたが、ふいに、
「あの、清野さん、」
と、聞いた。
「さすが、ライフルだと音が大きいですよね。近所中に聞こえてるし、隣の家の人は、音が部屋中に響くほどだったと言ってるそうですよ。」
「ええ、青山さん、私もそう聞いてはいますが…
 でも、それは狙撃場所の話で、コロシの現場まで聞こえてくるんですかね?私は狙撃班にいたことはないからよくは解らんのですが…」
「そうですか。」

 気のせいか、恭平がにやっとしたような気がした。

[*前n][次n#]

38/80ページ


[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!