灰色綺譚
二人のアレン
ザッ…と、アレンの形をした何かが現れた。
違う…
「アレンの魂は、こんなんじゃない。」と、そう本能が告げる。
「…カ…カ…ンダァ…」
「左右逆…っ」
「どうやら、とんだ馬鹿のようだな」
「カ…ン…ダ…ド…!」
「災厄招来!界蟲一幻!!!無に還れ!」
ユウの六幻が、技を繰り出す。
そしてそれは、壁からティムに導かれたアレンの左手によって阻まれた。
キレるユウに、アレンはアクマが見分けられると言う。
「この人はアクマじゃない!」
そう言うと、何かを呟いたソレの顔の切れ目から何か皮のようなものを剥がした。
驚く二人に、緊張が走る。
「そっちのトマがアクマだ!神田!!!」
キィーンッという金属音が響いた。
俺とアクマの間に入った春華が、攻撃を受けた。
そして、凄まじい土埃をたてながら、壁に衝突した。
ずるりと落下した体から、とめどなく血が流れる。
「…く…っ」
ムリな体勢からカドゥケウスで攻撃を防いだが、相殺し切れなかった。
背中に衝突時に出来た裂傷が、必要以上に血を流した。
ユウが攻撃を受けないように、ユウと偽者の間にアレンが二人になった時点で移動したが、タイミングを上手くはかれなかった。
「「春華?!」」
吹き飛ばされた春華に気を取られた瞬間、敵に六幻を吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
「テメェ…いつの間に…っ」
「へへへ…お前と合流した時からだよ!黄色いゴーレムを潰した時、一緒にあのトマって奴も見つけたんだ。
こいつの【姿】なら写してもバレないと思ってさぁ。ほら、お前も左右逆なの気にしていただろ?ホントは、あの小娘にするつもりったが…。」
春華は、捕まえられなかったから諦めたいうことか。
春華がもやしと一緒に行動しなかったのが、幸いしたのか…。
「白髪の奴の【姿】をあいつに被せた…へへへ。私は賢いんだ。私の皮膚は写し紙。まんまと殺られたな、お前。」
「…はっ!」
ドン!!!
凄まじい衝撃が身体に走った。
ケケケケケケ…という、ヤツの笑いがムカついた。
力を振り絞り立ち上がる。
「アレ?死ねよ!」
「死ぬかよ…」
ボタボタと、春華とさして変わらないような出血が、足元に大きな血溜まりを形成していく。
こんな状態で、春華の生死が心配だった。
それに…
「俺は…あの人を見つけるまで。死ぬワケにはいかねぇんだよ…」
俺は…
「ギヒャヒャヒャヒャ!!すげーー!立ちながら死んだぞ!」
「お前ぇえぇえ!!!」
バアアンッ!!という、轟音と共に敵は吹き飛んでいった。
「春華?!神田!!」
「…ハ…ハ…」
「…あ…れん…」
「(!二人とも呼吸してる。まだ生きてる!)春華、大丈夫ですか?!(二人とも出血が半端じゃない…)」
「へ…いき。あく…ま、く…るから…に、げ…て。」
「辛いと思いますが、少しだけ我慢してください。」
そうしてまた、春華の意識が暗闇に包まれた。
[*黒白][銀灰#]
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