灰色綺譚 シスコンと白い団服 司令室の主は、爆睡していた。 資料と本に埋もれて、リーバー班長に呼ばれても、揺すぶられても、殴られても、夢の国から帰ってこない。 「リナリーちゃんが結婚するってさー」 と、ぼそっと耳元でヒトコト。 「リナリィィー!!!お兄ちゃんに黙って結婚なんてヒドイよぉー!!!」 「「「「……」」」」 「悪いな。このネタでしか起きねぇんだ、この人。」 『このネタしか』って限定してるのに、揺すったり殴ったりしたのは何でだろう…。 「いやーごめんね。徹夜明けだったもんでね。」 「オレもっスけど!」 「さて、時間が無いので粗筋を聞いたらすぐ出発して。詳しい内容は、今渡す資料を行きながら読むように。」 「「!」」 「3人で…ですか?室長。」 「そう、三人トリオで行ってもらうよ。え 何ナニ?もう仲悪くなったのキミら?春華ちゃんも大変だねぇ…。でも、ワガママは聞かないよ。」 シャッと世界地図を出すと説明を始める。 「南イタリアで発見されたイノセンスが、アクマに奪われるかもしれない。早急に敵を破壊しイノセンスを保護してくれ。」 左右で険悪な雰囲気を醸し出している二人に挟まれつつ、こっそりとため息を吐いた。 −黒の教団内・地下水路− 「これ、着なきゃいけないんですか?」 アレンがコムイさんに質問してる。 ちょっと大きそうだけど、似合ってるから問題ないと思う。 「エクソシストの証みたいなものでね。う〜ん…春華ちゃんは大きすぎるよね、ソレ。」 そう言われ、動こうとした瞬間に裾を踏んでこけた。 コムイさんが受け止めてくれたけど、これで戦闘なんかムリな気がする。 「申し訳ありません、室長。ありがとうございます。」 「いやぁ、気にしなくていいよ。大きいの着せたのボクだし。 仕方ないから、僕と一緒のデザインでもいい?白い団服になっちゃうけど、サイズがね…小さいのはコレしかなくて。作り終わるまでガマンしてね。 春華ちゃんには、あの普段着みたいな可愛いデザインにして作ってるからねぇ。」 「ありがとうございます、室長。」 「コムイって呼んでぇ。コムイお兄ちゃんでもいいよ?」 「ちょ、コムイさん!」 「あ、戦闘用に造ってあるから、かなり丈夫だよ。あと、左手の防具は、ボク的に改良してみました。」 「?!…ティムキャンピー!どこ行ってたんだお前。」 ゴソゴソと、袖から出てきたティムキャンピー。 あれ?着るときに気付かなかったの?アレン。 というか、気付かないくらい団服が大きいの? そんな疑問を持ちつつ、小船に乗った。 「ティムキャンピーには、映像記録機能があってね。キミの過去を少し見せてもらったよ。だから徹夜しちゃったんだけど。いってらっしゃい。」 「行ってきます。」 「行ってきます、コムイお兄ちゃん。」 そう、何となく試しに言ってみた。 アレンとユウ、リーバー班長がビックリし、コムイさんは狂喜乱舞していた。 「春華ちゃんが、やっと懐いてくれたーっ!!!」という声が響いたけど、この際気にしない。 気にしちゃいけないの…。 恐ろしい言葉だわ。二度と言わない…。 [*黒白][銀灰#] [戻る] |