灰色綺譚
荊の道、血染めの薔薇
眼前に広がるのは荊の道
血染めの薔薇が散華して
新たに咲き誇る白き薔薇
どうか迷わないで下さい
死と絶望が満ちる空間は
全て見失ってしまうから
†第12夜†
アクマ…ちょめ助が、もの凄い勢いで船を引っ張っている。
ちょめ助の慌てぶりにラビがどうかしたのかと聞くが、「オイラの都合だっちょ」で誤魔化している。
実際は、クロスがアクマの本能が完璧に抑えられないせいで、殺戮本能が暴走してしまうのを止めるために「自爆」がプログラミングされている。
「でも、こっちも早く江戸に着けた方が助かるよ。」
ラビが振り返った。
息切れしているミランダと、支えているリナリー。私は手摺りにぐったりもたれかかっていた。
「春華とミランダの疲労が激しいの。」
そう言って、私たちの状態をラビに話すリナリー。
ミランダは、アクマの攻撃で受けたダメージが全て、刻盤に流れ込んでいるから。
私は…
「春華…無理に無理を重ねたから…回復できないみたい。それにミランダのイノセンスと反発しちゃうからって、ヴァーチュース以外を極力抑えてるから。」
「大丈夫か、春華、ミランダ。ご、ごめんな。ちゃんと守ってやれんくて。」
「いいえ…ごめんな…さい。ごめんなさい。私…江戸までもたないと思う…。」
「気にすんなさ」
ラビはそう言ったけど、ミランダが気にしているのは違う部分。
死者が出ている可能性を言っている。
「ごめんなさ…それだけじゃなくて…私は…私はこれから…」
ミランダの泣き声が聞こえる
彼女は、みんなに言ったんだろう、私と約束したから。
-私が発動を解けば-
-全てが現実の時間に戻ります-
「ミランダ…」
たぶん、この後の言葉にラビは反応するだろう…
「ひとりで背負っちゃダメだよ?エクソシストはあなただけじゃない。みんな一緒だからね。私達は…」
ブックマンとエクソシストの狭間で揺れ動くココロが
「一緒に踏む道だからね」
リナリーの言葉とブックマンの声が不協和音のように重なる
-戦争にハマるな-
-お前はブックマンの継承者であり、何者でもない-
-いかなる事態にも傍観者であれと教えたはずだが?-
-たまたま教団側にいるだけだ-
荊に絡めとられていくラビのココロ
でも、その痛みの意味を知ってもなお、傍観しなければならないのがブックマン
いずれ、向き合わなくちゃいけない痛み
「…らび…」
私の小さな声に、ラビだけが気付いて哀しそうに笑った
「…わたしといっしょ…」
小さく頷いたラビは、私の正体にだいぶ気付いている
同じ場所にずっと留まれない、その性-サガ-を知っている
[銀灰#]
[戻る]
無料HPエムペ!