執事綺譚 既視感2 詩織様の前にお世話をしていたお嬢様。 春華様は、私の理想のお嬢様だった。 儚くも美しいお嬢様。 気高く聡明なお嬢様。 慈愛に溢れたお嬢様。 「春華様は…」 貴女の御心は何処ですか? 私の心も身体も…運命さえも、全てを貴女に捧げる覚悟でいたのに… なぜ…望んで下さらなかったのですか… 「…春華様…私の最愛のお嬢様…」 手は…虚空を掴んだ あのお方は、消えてしまわれた あの絶望感は、いまだに影を落としている。 ―ねぇ…理人― ―何ですか?― ―私ね、絶望を知ってしまったの― 泣きそうで、泣かない。 痛みに堪えていた、そんな表情で私に春華様は言った。 絶望を知ったと…。 ―…春華様…泣きたい時は、我慢されなくても良いのですよ…― ―泣かないわ。絶望と希望は両方起きるの、そして運命は試す。― ―…それは…?― 一通の手紙と書類 [*前へ][次へ#] [戻る] |