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長編
A

律が歌いだして、部室の空気が一気に変わった。

―歌声…落ちてないようね……。

雪からすれば律はまさに宝の持ち腐れ的な事をしているように思えた。

―才能だけは馬鹿みたいにあるくせに、気付いてないなんて…

小学生までは一緒に歌の教室に通ってた。

中学生に上がって私がピアノに専念するようになっても、律だけはずっと通い続けてた。


―高校上がって、絵をやる…だもんなぁ…

一時期
本気で美術というものを恨んだ。

―まっ、私も律の事言えないけど……。

ただ……
この子とこうして合わすのいつ以来かしら…懐かしいわ。


チラリと
歌っている律を見ると幸せそうな顔をしていた。

もうすぐでソロパート

律ではなく
如月時雨のだが

そこで一旦止まる予定だった。

だが
続いていた。

―如月っ

後ろでずっと聴いていた如月時雨が律の横に立って歌っていた。

―すごい……

まさかと思って
嫌がる律を連れて来たがこうも上手くいくなんて。

―いや、如月はこうゆう男だよ……。


自分は2人の天才を目の当たりにしている。
それがひどく嬉しかった。

どこまでものびる
どこまでも通る

曲は終盤に差し掛かっていた。

終わりたくない

まだ続けていたい。

そう思える歌だ。

律や、
如月ですら思っているだろう。

だが
終わりはくる。

雪が最後の一音を弾き終えた。

誰も何も言わない。

いや
言えないのだ。

沈黙が続く。

その沈黙を破ったのは拍手だった。

後ろの壁に寄り掛かったまま一人の男性が手を叩いていた。

「いやぁ、素晴らしい君才能あるよ名前は」


音楽の今井先生
合唱部顧問でもある。


「あっ……、高槻雪の友人の日向律です」


「すごいでしょ先生。律才能あるくせにソレを活かせないとこに居るの」


私は少しムッとした

どうゆう意味よと視線で雪に問う。


「勢いで美術部入って、部長まで押し付けられちゃってもう本当にお馬鹿ちゃん」


「雪、私まだ絵の制作途中だから戻るわっ」


そのまま
走り出した。

そのせいで
私は、如月時雨が呼び止めたのに気付かなかったのだ。

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あきゅろす。
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