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短編
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暗闇にぼんやりと浮かび上がる影二つ

押し寄せる激情に身を重ね
快楽と言う名の水面に漂う


…唯の一言も交わす事無く



激情の波も納まり 一度は静まりかけていた
セブルスの心は、又しても乱れ始めた。




----後悔という名の嵐に。


次々と湧き上がる感情を
まるで振り払うかの様に立ち上がると
無言のまま身支度を始めた。



いつもそうだ


何故?

…どうして自分はこの気持ちを抑えられない?


このままではいけないと
この関係を断ち切らねばいけないと
何度自分に言い聞かせても
彼女の…アンジェの手を放す事が出来ない。


愛しているからこそ 共には歩めない

闇に染まってしまった自分と
共に居させてはならない



…幾度も繰り返してきた思考を
性懲りも無く また思い巡らせる。

己の愚かさに薄く自嘲をし
シャツに袖を通そうとしたその時
左腕の刻印が視界に入った。


刹那 セブルスの心は
ナイフで抉られた様に激しく痛み
締付けられたかの様に苦しみ出す。 



決して消える事の無い刻印
見えなくても存在を主張する刻印

…何よりも 
この刻印で行ってきた行為は、許される筈は無く
例え刻印が薄くなり消えるような事があっても
決して忘れることは無く、彼の心に刻まれるであろう。



力の無い物たちを 力でねじ伏せ
苦しめ 殺め 血塗られたこの身は
愛する者を守る所か
人を愛する資格すらないのだ。


そう再認識したセブルスは
アンジェに背中を向けたまま

「もう…終わりにしよう」

そう呟いた。


彼女を見れば躊躇ってしまうから。
憎まれても仕方ない
哀しい思いをさせてしまうかもしれない
それでもこれが最善なのだと
深くゆっくりと息を吐いた。



「逃げるの?」

一言も発さず ただじっと
彼の背中を見詰めていたアンジェが
挑戦的に言葉を投げかけた。


ビクンッ

後ろ向きのままのセブルスの背が揺れる。


「…っ…私は…っ」

苦し紛れに言葉を返そうとするが
上手く言葉が出てこない。



まさに図星だった。


自分の行為を正当化させる為でも
彼女を守る為でもない


自分に降りかかった出来事に
全ての事柄に


目を逸らしたい 
逃げ出したいと言う事実を見透かされ
抵抗すれば抵抗するほど
足掻けば足掻くほど
暗く渦巻く底なし沼に足を取られて
身動きが取れなくなる。



「…ねぇ、セブルス?」

アンジェは彼の名前を呼ぶと
ゆっくりと歩み寄りながら話し続けた。


「貴方のその口調が変わったのは何時から?

 言葉と一緒に心まで偽るようになったのは何時から?

 私を…誤魔化せると本気で思ったの?」


責めるでもなく
まるでシャボンを吹くかの様に
アンジェは優しく問いかける。


すぐ背後に、アンジェの気配を感じたが
振り返れば自分が何をするのか判らない。
セブルスは背を向けたまま虚ろに壁を見続けた。


「突き放せば 大人しく去っていくと考えたの?

 そうして貴方は1人で何もかも抱え込むつもりなの?」


哀しげに そう囁くと
まるで真綿を包むかの様に ふんわりと
アンジェはセブルスを背中越しに優しく抱きしめた。

背中に額を押し付け 必死に
何かを耐えようとしているその体は
小刻みに震えていた。



「…私は…
 既に闇に染まってしまったから…」


セブルスはそう言うと
まるで壊れ物を扱うかの様に
自分に回された手をそっと解こうとした


その時



「貴方の心は染まって居ない!」


…悲痛とも言える小さな叫びが破裂した。

「確かに…貴方の手は闇に染まってしまったかもしれない
 
 でも…でも、心までは染まって居ない。
 
 だから私を避け様と、私から離れようとするんだわ」


セブルスを抱き締める腕に力が入る。
“離れたくない”と訴えるかの様に。



「…だからこそ。自分の罪を潔く認めるからこそ
 私は1人でその罪を背負わなければならない」


目を閉じて静かにセブルスは呟いた。
誰に言うでもない、自分に言い聞かせるかの様に。


「ばかっ」

人を蔑む言葉の筈なのに
何故か優しく感じられる発言だった。

アンジェは抱き締めた腕を解くと
セブルスの左手を両手でそっと包んだ。


「人は支えあって生きていくものなのよ?
 決して1人で生きて行く事は出来ない。
 
 …貴方の仕えている“あの人”も
 貴方たちが居なくては何も出来ないでしょう?」

そう言って 両手で包んだ左手を
そっと胸に抱き寄せた。


「貴方の罪は貴方しか償う事は出来ない。
 でも、貴方が辛い時私は貴方を支える事が出来る。
 貴方が闇に喰い尽くされそうになったら
 飲み込まれない様に 私が照らしてあげる。

 …私は、置いていかれるのは否なの。
 
 お願いだから…


 私にもその重荷の一旦を背負わせて頂戴?」


そう言いながらゆっくりと前に回り込んだアンジェは
優しい微笑でセブルスを見上げた。




「大馬鹿者だな」

ニヤリ

と笑うとそう告げた。


「貴方の為なら大馬鹿に成って見せるわ」

アンジェも悪戯っぽい微笑で応対する。




「本当に馬鹿だ…」


まるで自分に
告げるかの様に
再びそう呟くと

セブルスはアンジェを強く抱き締め
そっと口付けた。


深く…甘い kiss

それはまるで

「2度と離さない」

という誓いの様に…  



---end---





+-あと(あ)がき-+


888Hit のお礼にチェシャ様からのリクエストで書かせて頂きました。リクエスト内容は以下の様な物でした♪
・スネさん夢
・初めは切なく、最後は甘く
・22歳の頃、丁度デスイーターのスネさんが見たい!
リクエスト通り頑張ったつもりですが、如何な物でしょう?

アンジェさんみたいな女性が居たら
セブルスは教授になっていませんね きっと。

補足(蛇足?)ですが、ヒロインの年齢は同い年。
2人の仲は学生時代から…と思って頂けると有難いです。
同年代だとどうしても女性の方が精神年齢が上を行ってしまいますからね。
こういう時にはinitiativeを取りつつも優しく包んであげたらよいかと。

この後はもう、セブッち覚悟したんだから
格好良くアンジェさんを守って欲しいですね。うふ。


2005.12.2 雪姫花




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