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イった直後にこんなにも無遠慮に攻められたら、どうしたって正気でいられる訳がない。

おまけに、俺の身体を背後から抑え込んで激しい律動を繰り返している玲司さんはまだ一度も射精をしていないどころか、イきそうな気配すらない。
それは多量のお酒を飲んでいるからイくまで時間が掛かるかも知れないと彼自身が言っていたことで、それがその理由なんだろうけど。


「やッあッ、だッあっそなっ、う、うっあぁ――ッ!」


シーツに顔を擦り付けて訳も分からず喘いでいたら、自分でも理解しないまま絶頂を迎えていたらしい。
腰から下が砕けそうなくらいの快感がもうずっと続いているような感覚で、身体を痙攣させながら何も考えられなくなっていたら漸く玲司さんが俺の中からソレを引き抜いた。


「あーだめだ、足りない」


漠然とした希望が見えた後のこの発言だったから、頭がちゃんと働いていなくても酷く混乱してしまった。
動揺の声すら上げられずにいる俺の身体を今度は仰向けに回転させた彼が、熱に浮かされたような表情で俺を見下ろし、そしてまた直ぐに体内を貫く。


「ひっ、あ゛ぁッ…」

「ん、やっぱこっち…葉太のその顔見てないと、出るもんも出ないわ」


死ぬ程可愛い…と譫言のように呟かれた台詞を聞いて、全身に鳥肌が立つような衝撃が走った。

その時に締め付けを受けた玲司さんが「可愛いって言われて嬉しかった?」と笑いながら投げ掛けてきたけど、そうじゃない。
それもあるけど、だって、玲司さんは俺の”声”が一番好きな筈だから。


「どした。ああ、動いて欲しい?」


茫然としている俺を見て勘違いをした彼が「ごめんな」と言って直ぐに腰を動かし始めた。
お陰で益々言葉を紡げなくなってしまう。


「あッ、あ、あっ、れいっじさっ」

「…はぁ、かわい……葉太…っ」

「あっ…!ううっ、んうっ!」


頬に添えられた手は優しくて、俺を見つめるその目は蕩けるように甘い。

今まで見えていなかった間もずっとそんな顔をしていたんだろうか。
激しさの中に甘さを含んだような、そんな顔をして、ずっと俺のことを見ていたんだろうか。

そう思ったら身体の中が疼いて、玲司さんだけを求めるように激しく収縮を繰り返す。


「あーすご、…っ…きもちっ…腰止まんない…っ」

「っあっあぁ、あッ!」

「っ……はっ……葉太…っ…」


それまで散々言葉で煽られてきて、恥ずかしい言葉も言わされていたのに。
こうして向かい合ってからはそんなことは全然なくて、殆ど無言で腰を振って快感を追い求める玲司さんに心までもが翻弄されていた。

玲司さんが何も言わないから俺も黙っていた方が良かったのかも知れないけど、ぐずぐずぐに溶けた頭ではそんなことまで考えられなくて、口からはそれまでの要領で煽るような言葉が殆ど無意識に飛び出してしまう。


「あっだめッ、きもちぃっ、もっそれだめっイっちゃうっ、よすぎてっおかしッ、だめっだめっ!」


言葉にする程に快感が増殖していくようだった。
こんなの自分で自分を煽っているようなものだ。

身体の奥から熱がせり上がってくるような感覚がして、ぎゅっと目を閉じると、その瞬間に玲司さんが「イけ」と留めの台詞を吐いた。


「ッ――!!…っあ、あ…ぁ…ッ」


それに合わせてビクビクッと身体を痙攣させると、玲司さんの口からも熱く乱れた息が漏れる。
そのまま馬鹿になった俺の身体をしっかりと掴み直し、叩き付けるような激しさで腰を突き上げ続けた彼が、程なくして「ああ無理っ、出るっ…」と上擦った声で限界を訴えた。


「出していっ?こん中、俺の精子っ…」

「あッ!あっ、ほしっ、せーしくださっ、れーじさんのせーし、中にほしいぃ!」

「ッエロ過ぎっ…じゃあ出すからっ…俺の精子、奥に出すからなッ…」


もうこれ以上は無理なのに、それでもまだ深く繋がろうとするみたいに極限まで腰を密着させた玲司さんがそのまま数回腰を打ち付け、それから俺の奥に精を放った。

びくんびくんと震えた熱の塊から勢い良く飛び出した迸りが、俺の身体の奥を濡らす。
その感覚に途轍もない幸福感と興奮を抱いて、その衝撃で俺も軽くイってしまった。


「あ、あっ、ああッ〜〜!」

「ッ……んッ……」


あまりの気持ち良さで、もうこのまま意識を手放してしまいたいと本気で思った。
それくらいに俺はもう十分満たされているけど、玲司さんの方は一度射精したくらいでは満足出来る訳がない。

精を出し終えたソレを一度抜くような素振りを見せ、ギリギリのところで止めて再び中を抉ってきた彼に、分かってはいても対応し切れない頭と身体が混乱して騒ぎ出す。


「あああああッ…!」

「やば、…葉太ん中、俺の精液でぐっちゃぐちゃ…もう勃った」

「ひッ!だっめ、だめッもうだめ、れいじさっ…まって、まってくださっ…」

「待てないってこんなん、気持ちよ過ぎて、腰勝手に動く」


知らない。そんなの知らないから。
気持ち良いのは分かるけどせめて少し、ほんの少しだけで良いから待って欲しい。


「あっれいじさっ、だめっ、あッあっ…!」

「何でだめ?カメラ見てた時の方が、すげー積極的だった。もしかしてさっきの、撮られてると思って演技してただけ?」

「ちがッ、ちがうぅ、そんなんじゃっ」

「じゃあちゃんと興奮してた?俺もハメ撮り意識して、無駄に喋ってたけど、…っ…言葉攻めされんの、好き?さっきみたいにやらしいこと言われて、言わされて、俺にいっぱい苛められたい?」


そんなのただの誘導尋問だ。
訊いてるようで、答えなんて初めから一つしか用意されていない。


「すきっ好きですっ!いっぱい、いじめられたいぃ!」


俺の中の答えだって最初から一つしかなかった。
そんな風に苛められるのが好きかと訊かれたら、どの状況でも好きだと答えていただろうから。

ただ、今はそれが好きかどうかの話をしているんじゃなくて、少し待って欲しいと言ってるだけなんだ。俺は。

もしかしたら玲司さんも分かっていてやっているのかも知れないけど。


「いいよ、いっぱい苛めてやる。えろいこといっぱい言って、いっぱい突いて、葉太ん中に精子出しまくるからっ…葉太も俺の精液、全部搾り取ってくれよ…っ」

「あ゛っいっぱい…なかっ?中だしっ?」

「そう、中出し。こん中いっぱい、溢れるくらい。それはやだ?いらない?」

「いるッいりますっ、ほしっ…玲司さんのせいしっ、ぜんぶ俺のがっいい!」


極々自然な流れで頭がそっち方向にシフトされてしまった。
もう”待って欲しい”なんて弱気な感情は一切消えてしまっている。

…筈だったんだけど。


「全部葉太のだよ。精子だけじゃないだろ?俺は全部、葉太のじゃん」

「んうっ、でもっ、PBはぁっ」

「っ…またPBの話。好きだな、マジで。嬉しいけど、何でだろ。今は全然嬉しくねーわ」

「ッ、あ、え…れいじさ――」


無意識だったけど俺の発言が彼を怒らせてしまったようだ。
気持ちを凍らせながら瞠目していたら、それまで緩々と動いていた腰が止まって、一発ガツンと力強い突き上げをお見舞いされた。


「ッ――!?」

「こうだろ?なあ。ちょっと止まったらすぐ違うこと考えるから。ずっとこうしとけば、目の前にいる俺のことだけ考えるよな」


声も上げられずに愕然としている俺に向かってそう吐いた玲司さんの表情はすっかり捕食者のような獰猛さを纏っていて、乾いた喉を唾液がぎこちなく通っていった。

そこから俺が何度イかされ、そして玲司さんが何度俺の中に精液を注いだことか。

勿論数えていないから分からないけど、その証拠は全てベッドヘッドに置かれていたカメラに記録されていたと言うことを、俺は翌朝になって思い知ることになる。




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