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「ごめん、ちょっと待って」と言って俺の中からその熱を抜き去ってしまった玲司さんに、今はもう、伝えたい言葉が頭の中に溢れかえってしまっている。

本当のことを皆に教えたいと思うけど、でも知られたくない。
自慢したいけど、自分だけが知っていたい。

相反するその気持ちは俺にはよく分かるし、その感情はこれからも消えないだろう。
俺達の関係を世間に公表出来ない以上、その矛盾はずっと続く。

そして俺が、玲司さんだけのものにならない限り、全ては解決しない。

でも、だから。


「俺は、今ここにいる俺は、玲司さんだけのものです。玲司さんだけを見てます。玲司さんだけを求めてます。それは、それだけは嘘じゃありません。それだけは、誰にも否定出来ない事実です」


今この瞬間、限りある時間の中だけの話になってしまったとしても。
俺が玲司さんだけのものになる時間は、確実に存在しているから。

嫉妬でも怒りでも、どんな感情だろうと全部俺にぶつけて欲しい。


「俺にとってPBは特別です。玲司さんも特別です。二つの特別の意味は違うけど、特別が二つあるのは玲司さんだけです」


切り離せないものを無理に切り離そうとしなくていい。
全ての要素を含んだ存在が、今俺の目の前にいる瀬戸玲司な訳だから。


「だから、俺にとって玲司さんは最強で最高で、唯一無二の、絶対的な”彼氏”なんです」


自分で言いながら幸せを感じてしまった。
改めて、玲司さんが俺の彼氏だと言うことが嬉しくて、幸せで堪らない。

緩む頬を抑えることが出来ずに微笑む俺を見て、玲司さんが困ったようにたらりと眉を垂らす。


「…葉太とおったら俺、ずっとかっこ悪いわ」

「え、方言……あ、待って、なんですかそれ。ない、ないです」


一瞬出た方言に反応してしまって訂正が遅れた。
そんな時は一回もなかったと主張すると、俺の身体を力一杯抱き締めてきた玲司さんが甘えるような声で「かっこ悪くてもずっと好き?」と訊ねてくる。

そのあまりの可愛さに悶絶して口から変な声が出た。


「好きです。ずっと好きです。好きじゃない時がないです」

「そんなに?」

「そんなに」

「どんな俺でも?」

「どんな玲司さんでも」

「俺だったら、何されても許せる?」

「許せます。玲司さんが俺にしたら駄目なことなんてないですから」

「じゃあハメ撮りしていい?」

「はい――………え?」


勢いで返事をした後に気付く。
今のはさらっと返事をするような発言ではなかった、と言うことに。


「はめ…はめどり…?」


玲司さん今、そう言った?俺の聞き間違いじゃない?

目が点になったまま訊き返した俺を見て、ぶっと吹き出した玲司さんが「可愛過ぎ」と言いながら再び俺をぎゅうぎゅうと抱き締めてくる。


「可愛い。好き。俺も葉太のことずっと好き。ずっとずっと愛してる」

「ッ!そっ……え、ええぇ…」

「それも、それも可愛い。ヤバい。挿れたい。死ぬ程喘がせたい」

「えっ、それは、はい…っ」


さっきまで入っていたのに今は駄目とかそんな訳がないし、何なら抜かれたこと自体がショックだったくらいなんだから。
今直ぐに挿れ直して欲しいに決まってる。

素直に「挿れてください…っ」と強請ると、上体を起こした彼が「撮っていい?」ともう一度確認を取ってくる。


「と…とるって…」

「ビデオカメラで。隣から持ってくるから」

「もっ…て…」

「結構何でもあるよ、俺んち。録音だけも出来るけど、折角だから映像で残したい」

「………」


やったら駄目なことなんてないと言ったのは俺だ。
じゃあもう好きにしてくださいと言うしかないじゃないか。

控え目に「はい…」と答えると玲司さんが表情を輝かせた。
あからさまに弾んだ声で「直ぐ取ってくる」と言って部屋を飛び出して行った彼の背を茫然と見つめることしか出来なかったのは、そうは言っても恥ずかしいからだ。

だって、撮るって…

想像しただけでまた体温がぐっと上昇した。
両手で顔を覆いながらベッドの上をのた打ち回っていたら、直ぐに入口から「何カメラ回ってないとこで可愛いことしてんだよ」と咎めるような声が聞こえてきて、慌てて飛び起きる。


「はやっ、早い…っ」

「直ぐって言ったじゃん。てかもう回すよ」

「え!?やっ、そんなっ…」


手元のビデオカメラを操作しながら近付いてくる彼を見て、咄嗟に腕で顔を隠してしまった。
そのまま直ぐにベッドに乗り上げてきた彼が、片手で俺の腕を退かせながら「恥ずかしいの?」と意地悪な質問をしてくる。


「ッ……はず、かし…っ」

「かわい」

「うぅ…」

「いいよ、葉太はカメラとか気にしなくていいから。俺に集中しといて」

「あ、う、そんな…」


そんなこと言われても困る、って意味じゃない。
またそんな格好良いことを言って、って意味だ。

多分それは玲司さんには伝わっていないんだけど、それをわざわざ説明しようとは思わない。

何だかんだまともなように見えて全然まともじゃないんだよ、俺も。
酔ってるから。泥酔はしてないけど、それでもちゃんと酔ってる。


「自分で脚、抱えて」

「っ…は、い…」


言われた通りにしたら「いい子」と言って褒められた。

その時向けられた表情にどくっと心臓が脈打って、そこからはもう完全に玲司さんの言いなりになってしまう。


「葉太、挿れるとこ見てて」

「うう…」


羞恥を抱きながらも、視線を落として結合部に目を向ける。
そのタイミングでぴたりと宛がわれた熱を感じ取って、期待で背中が震えた。


「ほら、これ。何がどこに入ろうとしてる?」

「あっ…あ……玲司さんの…ちんこが……俺の、中に…」

「中に、何?」

「あッ!?あっ、なかっ…はいっ…入って、きてるっ」


ゆっくりと押し込まれる熱に興奮を煽られ、実況することにも撮られることにも羞恥心なんて抱いている場合じゃなくなった。


「あっ…玲司さ…っ…きもちぃ…」

「うん。何が気持ちい?」

「玲司さんの、ちんこっ…入ってるだけで、…すごいっ…きもちっ…ですっ」

「あー、やば……俺も。俺も葉太の中、入ってるだけで気持ちいよ」


そう言って目元を緩ませた玲司さんが「ずっと挿れときたい」と囁くように言って、空いている方の手で俺の頬を撫でる。

いつだって玲司さんは格好良いし、いつだって俺は幸せなんだけど。
今日は、特に今は、そんな些細な仕草にすら途轍もない喜びを抱いてしまう。


「あっ、ずっとっ……俺もっ…ずっとっ」


頬を撫でてくれた手に自分の手を重ねながら俺もずっとこのままがいいと伝えると、少し怒ったように眉を寄せながら「可愛過ぎんだってマジで」と言った彼がその腰を後ろに引き、それからぐんっと前に突き出した。


「ああぁッ!」

「さっきのままとこっち、どっちが気持ちい?」

「あっ、こっちがっ…きもちっ」

「俺も。このままいっぱい、いっぱい気持ち良くしてやるよ。葉太が好きなとこ、いっぱい突いてやるから」

「ひっ、ああぁ…ッ」


ああ、何かもう駄目だ。
何を言われても何をされても感じ過ぎて怖い。

どうしたんだろう俺。
よく分からないけど、本当にこのままいっぱいいっぱい突かれてしまったら、間違いなく頭がおかしくなる。


「れいじさん俺っ、んんっなんかっ…おれっ」


自分でもよく分かっていないこの状態を一体どうやって伝えようとしたのか。
俺自身がそんなだから、玲司さんにちゃんと伝わる筈もなく。


「可愛い。可愛いよ葉太。好きなだけ、イっていいからな…っ」


感じ過ぎて混乱していることだけは汲み取ってくれたようだけど、その後の行動がそのまま俺の中を責め続けることだったから、絶えず与えられる快感に俺の中のあらゆるものが爆発してしまった。




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