11 ※
直輝さんが俺のことをよく理解してくれていることが分かって、それだけでも嬉しかったのに。
徳川さんも俺の為に遠慮を止めてくれて、尚且つご褒美の約束までしてくれたことが嬉しくて。
表情を緩ませながら「はい」と答えると、徳川さんだけじゃなくて他の二人も嬉しそうに笑っていた。
その表情も俺にとったらご褒美みたいなもんだ。
なんなら徳川さんから特別何かして貰わなくなって、直輝さんがしてくれることが全部ご褒美になってるからそれで十分だって言いたくなる。
まあ、貰えるもんは貰っておいて損はないのかも知れないけど。
「これ、気持ちいい…?」
さっきは尊さんが主導で動いてくれてたから、俺から積極的に何かをするって感じじゃなかった。
だから何も考えずにいられたけど、手で扱くってなったら俺がちゃんと考えて動かさないといけない。
とりあえず徳川さんのソレをそっと握って自分がする時みたいにゆっくり上下に扱いてみてるけど、上手く出来ているかどうか。
それが分からなくて訊ねた俺に、徳川さんが「気持ち良いよ」と答えて褒めるみたいに頭を撫でてくれる。
「詩音くんが触ってくれてるだけで気持ち良いから」
「ん…じゃあ、いっぱい触る」
そう答えたら手の中のソレがまた大きくなった。
びっくりして視線を上げると、少し困ったような顔をした徳川さんが「我慢出来るかな…」と呟く。
「我慢?」
「…直ぐイくかも知れない」
「それってだめなの?」
「…うん。今の詩音くんをもっと見ていたいから」
その理由を聞いて俺は別に上手くやる必要なんてないんだってことを悟った。
だって俺の手コキが下手なら徳川さんもイけないじゃん。
その方がいいって徳川さんが思ってるんだったら、俺も不安に思わなくて済む。
「それなら俺が邪魔に入っても大丈夫だね」
そう言って俺の股の間に身体を入れてきた直輝さんが、その手で俺のアソコを握り込んできた。
突然の刺激に驚いた拍子に握っていた徳川さんのソレから手を放してしまうと、直ぐにまた握り直すように手を掴まれて「あまり力は入れないでね」と忠告される。
それは俺も分かってるつもりだけど、俺の方までちんこを扱かれてしまったら意識が拡散してしまう。
なんだって俺は責められるのに弱いんだ。
だからつい、そっちにばかり意識が向いてしまう。
「詩音くん、手が止まってる」
「んっ、だって…直輝さんが…っ」
徳川さんに指摘されて言い訳をすると、直輝さんがくすくす笑いながら「気持ち良いんだよね」と言って手の動きを早めてきた。
「あっ、もっ…だめっ…!」
「何が駄目なの?自分だけ気持ち良くなってるから?」
「んっ、そうっ…徳川さんの、出来な…っ」
「詩音くんはしてあげるのも大好きだね。でも今はそれでも良いみたいだよ。徳川くんはえっちな詩音くんを見ていたいんだから」
「えっちな…っ…俺…?」
「そう。詩音くんが感じてる顔をいっぱい見せてあげたら、徳川くんも喜ぶってことだよ」
「喜ばせたいでしょ?」と言って手コキを続ける直輝さんから徳川さんに視線を移動させると、徳川さんも甘やかすような表情で俺を見ていた。
上手くないどころかまともに手を動かせてもいないけど、徳川さん的には俺が一生懸命してあげてることに意味があるらしい。
だから、俺を気持ち良くしてくれてるのは直輝さんなんだけど、徳川さんの顔を見ながら喘いでいたら手の中のソレがどんどん硬くなっていった。
「気持ち良い?」
「うんっ、きもちぃっ」
「可愛い」
「徳川さんも、きもちいっ?」
「うん。詩音くんが名前で呼んでくれたら、もっと気持ち良くなれると思う」
「名前…、翔平(ショウヘイ)…?」
間違ってはないと思うけど、確認するように名前を呼んだら徳川さんが「呼び捨てなんだ」と言って少し嬉しそうに笑った。
「翔平、さん」
「直さなくていいよ」
「それは、無理っ」
「どうして」
その理由を答える前に尊さんが「俺も呼び捨てがいい」って言ったから、徳川さんに対して困った顔を向けながら「こうなるから」だと伝えた。
そんなの直輝さんだって同じことを言い出すに決まってる。
名前で呼ぶことに抵抗はないけど、呼び捨てにするのはなんか気が引ける。
「みんな、年上だし…っ」
「でも、シュガの時は呼び捨てだった」
「…それはっ」
ネットの世界はちょっと緩いところがあるから。
実際サトが年上かどうかも分かんなかったし、そもそもサト=徳川さんってことは昨日知ったばかりだ。
「シュガの時って、何の話?」
「オンラインゲーム上の詩音くんの呼び方です」
「え?徳川くんも一緒にやってたの?」
「たまに。詩音くんは相手が僕だと認識してなかったですけど」
「どう言うこと?」
「僕が素性を明かしていなかったってだけの話です」
だけの話…ではないと思うけど、まあいいか。
ゲームの話も勝手にされちゃったけど、知られて困ることではない。
でも直輝さんからしたら、引っ掛かるところがあったみたいで。
「ふうん。詩音くんがゲーマーなのは知ってるけど、ちょっとのめり込み過ぎなんじゃないかな。この前会ってたあの子も、そのゲームで知り合った子なんだよね?」
少し怒ったような顔をして訊いてきた直輝さんに「柚希の、こと?」と確認すると、徳川さんが「ユズキ?」と復唱して誰のことだ?って顔を向けてきた。
あ、そっか…それは徳川さんには言っちゃだめだったヤツか…
「もしかしてあの中の誰かと直接会ったの?」
そう訊いてきた徳川さんの顔が直輝さん以上に怒っているように見えて、うっと言葉が詰まった。
俺じゃ駄目だと思ったのか、直輝さんに対して「森野さんも会ったんですか?」と訊ねた徳川さんに直輝さんが「会ったって言うか、一緒にいる所を見た」と答えてしまう。
「どんな相手でした?」
「見た感じ詩音くんと同じくらいの年齢の男の子だったけど」
「…じゃあ、スノーか」
それだけの情報で言い当てた徳川さんに驚いた顔を向けると「だと思った」と言われた。
だと思った?俺達が仲良かったから?
「スノー?」
「森野さんが見た相手のゲーム上での呼び名です。詩音くんと凄く仲が良くて、僕が嫉妬するくらい詩音くんも気を許している相手です」
「ッ……」
”嫉妬”と言うワードに反応したのは俺だけじゃなかった。
でも、他二人は俺とは違う意味で反応していたようだ。
「正直俺も違和感は感じてたんだよね。おかしいくらいに二人の距離が近かったから、もしかしてそう言う関係なのかって疑いもして直接詩音くんに確認も取ったんだけど、ただの友達だって」
「詩音くんは恐らく気付いてません」
「…やっぱりそうなんだ」
「やっぱりそうって?俺だけ全然ついていけてないんですけど、そのユズキって男が詩音のことが好きって話だったりします?」
尊さんの言葉を聞いて「はあ?」と否定的な反応をすると同時に、直輝さんが厳しい表情で「ついてきてるじゃん」と返した。
そのせいで尊さんと徳川さんの表情も険しくなったし、未だに状況が掴めていない俺からしたら三人のその急激な態度の変化に動揺することしか出来ない。
柚希がどう、とかではなく。
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