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部屋に行ったら最後だと言うことは分かる。
つまり俺が「分かりました」と言ってしまったら俺は今日大切な物を失ってしまうことになる、と言うことだ。

俺が今日までずっと守り続けてきたソレを。
ソレを守りたくて彼らに返事をすることを悩んでいたと言っても過言ではない、大切な大切な俺のソレを。


「…ちょっと訊いてもいいですか」

「うん」

「どこまでしようとしてます…?」

「…必要な物は持ってきてる」


は?なんだその斜め上からの回答は。
最後までするつもりなんだなってことは分かったけども。


「なんで持ってきてるんですか」

「折角いい雰囲気になったのに物がないから出来なかった、って言うのが一番悔いが残るやつだろ?」

「やつだろ?って言われても俺、童貞なんで」

「勘のいい童貞って言ってたじゃん」

「残念ながら今は勘の悪い処女です」

「しょ…」


じょ、までは言わずに何とも言えない顔を見せる尊さんに「俺だって言いたくなかったですよ」と文句を言っておいた。
ついでに他二人に対しても「準備してきてる感じですか?」と訊ねると二人とも頷いたから、もう苦笑するしかなかったよね。

別に引いてるとかじゃないよ。
普通に怖気づいてるだけだから安心して。


「冷静に考えてください。俺は全てにおいて初体験なんですよ。それで相手×3ってのは、流石に俺の負担がエグくないですかね」


俺の意見は我ながら至極真っ当な考えだと思う。
三人も確かにそうだなと思ってくれたのか、うーんって感じでお互いに視線を交わし合って何やら意思の疎通を図っていた。

その後、直輝さんが「じゃあ…」って言ったから今日は一先ず考え直してくれたのかと思って安心しかけたんだけど。


「今日は最後まではしない。けど、次回以降の為に準備をする日ってことにして貰えないかな」

「準備?」

「そう。詩音くんもいきなりは怖いみたいだから、今日は指を入れてみるだけにして」


いや、指ならいいって話ではないんだ…と言い掛けてやめた。

確かに俺は処女を喪失するのが怖い。
と言うよりお尻に何かを突っ込むのが怖い。半端なく怖い。

でも俺だって、この人達とそう言うことをしたいって気持ちはあったりする。
今なんて特にそんな空気になってしまっているから、俺自身もそう言うマインドになっちゃってるところもある。

だから、そっちが譲歩してくれるなら俺だって譲歩すべきだよなと思ったんだよね。

「それも無理?」と訊かれたから「分かりました」と答えると、尊さんが唸りながらぎゅうって抱き着いてきた。


「詩音が痛くないように滅茶苦茶丁寧にするから」

「それは是非ともって感じなんですけど、尊さんがするんですか?」


俺の素朴な疑問に対して尊さんが「俺がしたい」と答えた声に、すかさず他の二人が「いや、」と否定の言葉を被せる。


「それはまだ決めてないでしょ」

「じゃあ今決めましょう。俺がしますね」

「何でそうなるの」

「別にいいけど、そう言うことなら本番は当然僕か森野さんに譲ってくれるんだよね」


そうじゃないとおかしいと言う態度で投げ掛けた徳川さんに対して尊さんは「え、嫌です」と即答していた。

尊さんつよ。


「それは我がままだ」

「そうだね。ただの我がままだね」

「百歩譲って徳川さんはまだ…って感じですけど、森野さんは嫌です」

「何で」

「最初に詩音に手を出したのは森野さんですよね?ってことは詩音のファーストキスは森野さんが奪ったってことでしょ」

「そうだけど、だからって俺が除外されるのはおかしいでしょ。寧ろ最初に手を出したからこそ、俺が最初の相手に相応しいと思う」

「それも単なる我がままかと」

「ですね。他人のこと言えないですよ」


あらあら。喧嘩はおよしなさいって言ったのにこの人達ったら。

そもそもなんで勝手にそっちだけで決めようとしてるんですかって話なのよ。


「お三方、俺の意見は無視ですかい」

「…詩音くんは、誰が最初が良いとかって考えがあるの…?」

「そんなのあったらその人を彼氏に選んでるんじゃないですかね」

「…じゃあ」

「話し合いで決まらないならじゃんけんするしかなくないですか?」


手っ取り早い方法を提案すると三人が微妙な表情を見せた。

なんだよ。全員我がままじゃないか。


「じゃんけんが嫌ならあみだくじでもなんでもいいんですけど。そんなに初めてにこだわるなら、せめて三人が平等になるようにしたらいいんじゃないですかね」


どうやったら平等になるかは俺には判断出来ないからそこは任せるけどと言ったら三人の間で会議が始まった。
ここは一旦彼らに任せてみることにする。


「その考えでいくならやっぱり森野さんはナシですよね。ファーストキス奪ってるんだから」

「この話は今決まったんだから今日より前の話は除外して貰えないかな。それこそ不公平だよ」

「じゃあ先ず三つの選択肢を決めましょう。それもちゃんと、同等になるような」

「同等ってむずくないですか?指入れるのとちんこ挿れるのじゃ全然違うし」

「でももし詩音くんが指でも気持ち良くなれたら、アナルでの快感を最初に覚えさせたのはその人ってことになるよ」

「…成る程っすね」


あ、尊さんもそこはなるほどなんだね。
まあでも、俺が指でもアウトでーすってなったら俺は指を入れた人しか知らないってことになるだろうから、その人が俺の最初で最後の人になる可能性はあるよね。

うん、俺は何を言っているんだろうね。

そんなことよりも、徳川さんにはアナルとか言って欲しくなかったなあ。
尊さんはさらっとちんこって言ってたけど確か前にも言ってた気がするからそっちはまだいいとしても。


「もう一つの選択肢はどうする?」

「そうですね。あくまでも初めてに拘るなら、あとはフェラですかね」


あーそれもそれも。フェラとかも言って欲しくないから。

徳川さんの口から直接的かつ卑猥な単語が飛び出すことに若干ショックを受けていたら、その単語を拾った尊さんが後ろで小さく「あ…」と何やら閃いたような声を漏らした。


「それって当然、詩音にフェラして貰えるのはその人だけですよね?」

「まあ、少なくとも今日はそう言うことにしないと平等にはならないと思う」

「じゃあ、俺はそれで良いですよ」


さっきまで指も処女も両方奪おうとしてた人があっさりとそれ以外の選択肢を選んだから、俺も含めてみんな拍子抜けしていたんだけど。
その後尊さんが「俺のちんこ咥えた後だと思ったらキス出来ないですよね?ってことは実質キス出来る権利も俺のものってことで」と言ったのを聞いて思わず「あざとっ!」と声に出して言ってしまった。


「キス出来ないのは辛いね。しかも今日は最後まで出来ないんだよ。俺か徳川くんのどっちかは今日は見守ってるだけってこと?」

「それは流石にちょっと」

「じゃあ、逆に詩音にフェラしてあげるとか」

「「…ああ」」

「お二人のどっちかは今日は詩音に愛撫するのを徹底する、みたいな?勿論アナル以外で」

「「…成る程」」


それもなるほどなのかよ。
この人達がお得を感じるポイントが俺にはさっぱり分からん。

てかそれ、結局俺の負担えぐいっす。




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あきゅろす。
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