4 ※
まあその後は直輝さんと尊さんのお陰でなんとか徳川さんの腕の中からは抜け出せることが出来たんだけど。
そこからの展開がどう考えても可笑しいんだよね。
「距離感バグってんのはそっちじゃないですか」
イケメン三人に取り囲まれた状態でまともに会話出来る奴なんかいるだろうか。
座れる空間なんかいっぱいあるのに、なんでわざわざリビングの真ん中で密集しなきゃいけないんだよ。
「恥ずかしがってる?可愛い」
「あー尊さん、耳元はナシの方向で」
俺の身体を後ろから抱き込むように座っている尊さんがご丁寧に耳元で喋ってくるからぞわってしてしまった。
そのことは伏せて止めろと伝えたのにバレバレだったのか、尊さんがわざと意識したような声で「感じる?」と耳元で囁いてくる。
「ねえって」
「詩音さ、俺達が来る前にお風呂入った?」
「え?ああ、シャワーは浴びましたけど」
「何で?」
「汗かいてたから」
起きた時にエアコンが切れていたんだと紛れもない事実を伝えたのに、急に首元をすんすんし始めた尊さんが「期待してたんじゃなくて?」と意地悪な質問をしてきた。
すかさず「脳内ピンクじゃん」と軽い感じで返したけどすぐに「そうだよ」と肯定され、こんな時に限って邪魔をしてこない目の前の二人をついつい睨んでしまう。
「喧嘩しないでとは言いましたけど、結託しろとは言ってませんよ」
「詩音くんって意外とそっちの空気は読めるよね」
「すいませんね。勘のいい童貞だっているんですよ」
「今のは褒めたんだよ。もっと疎いかと思ってたけど、結構やらしいこと好きだもんね」
そう言いながら直輝さんが俺の手の甲を指でなぞってきた。
ビクッと肩を揺らした俺の反応を見て、彼がふっと目を細める。
「あと、凄く敏感」
「それは知りません」
「確認してあげようか?」
何を、と疑問を抱いてしまったせいで反応が遅れた。
「結構です」と返した時には既に伸びてきた直輝さんの手が服の裾から侵入してきていて。
「っ、待って」
「馬場くんちょっと押さえてて貰っていい?」
抵抗しようとしたのに先手を打たれてしまった。
直輝さんに言われて俺の両腕を後ろで拘束してきた尊さんが「これでいいですか?」と訊ねる。
「全然何もよくないんですけど」と言う焦った俺の声と「うん、ありがとう」と言う満足そうな直輝さんの声が重なった。
その後すぐ、直輝さんの指が俺の左乳首につんっと触れて、何をされるのか分かっていた筈なのにうっかり変な声を漏らしてしまう。
「ほら。乳首触っただけでそんな可愛い声出す」
「っ、ちょっと待ってくださいって。冗談キツいですよ」
「冗談なんかでこんなことしないってもう分かってるでしょ」
いや、だからなんだって。
だから出来るだけ冗談で済ませられるようにもっていこうとしているんじゃないか。
今ならまだおふざけレベルで処理出来るだろ。
「直輝さん」
「大丈夫だよ。ちゃんと気持ちよくしてあげるから」
「ちが…うぁあっ」
指でなぞるように触られていた乳首を突然くにっと摘まれ、さっき以上に変な声を出してしまった。
多分今の俺の顔は真っ赤になっていると思う。
恥ずかし過ぎて目の前の二人の顔が見れない。
それでも直輝さんは容赦なくて、指で摘んだ乳首を継続的に刺激されて自分でも引くくらい身体がびくびくしてしまう。
「ここは俺がじっくり開発してあげたかったんだけど、もう既に開発済みなのか疑うくらいの反応するよね」
「んっ、それ、直輝さん…っ」
「うん、ごめんね。詩音くんが可愛過ぎて止めてあげられそうにない」
「あっ…そんなの…知らないから…っ」
別に可愛さなんか狙ってない。
開発済みなんてもってのほかで、そんなとこ殆ど弄ったことも弄られたこともないから身体がビックリしてるだけだ。
「尊さんも、離して…っ」
「腕痛い?ごめんな」
「ごめんじゃ…」
「詩音が逃げないって約束してくれるなら離してあげる」
「……」
そんな交換条件ずるいと思ったけど、さっき俺が提示した交換条件も結構ずるかったなと思い出してぐっと我慢した。
確かに、この状況を想定出来なかった俺にも非はあるのかも知れない。
でも俺だって、全く覚悟してなかった訳でもないんだよな。
少し振り向いて「逃げないから」と答えると尊さんが驚いたように目を丸くさせた。
それからそっと俺の両腕を解放してくれた彼が、ふっと表情を緩めながら顔を近付けてくる。
「詩音」
「…なに」
「大好き」
「っ……」
くそう。また尊さんのあざと攻撃にやられてしまった。
気付いたら「俺も…」と答えてしまっていて、すかさず唇を重ねてきた尊さんがキスを繰り返しながら「俺も、何?」と囁くように訊いてくる。
「す…好き…」
「誰が?」
「っ、今の流れで尊さん以外に誰が…」
そこまで言って他の二人の存在を思い出した。
はっとなって視線を目の前の二人に戻すと、わざとらしい笑みをその顔に貼り付けた直輝さんが「俺は?」と言いながら乳首をぐりっと刺激してくる。
「うあッ…痛い…って」
「うん。俺は?」
「ッ…好き、だけど…っ」
「だけどは余計だね」
そう言って、まるで俺を咎めるみたいに痛いくらいの強い刺激を繰り返し始めた直輝さんに、尊さんが後ろから「取らないでくださいよ」と不満を漏らす。
「キスは譲ってあげるんだからいいでしょ。その代わり詩音くんの乳首は俺が貰うよ」
「そうなると僕は、こっちを触るしかなくなってきますけど」
「いいですよね」と誰に対して確認を取ったのか。
それまでずっと無言で成り行きを見守っていた徳川さんが、突然俺のアソコを触ってきた。
「ちょっ、徳川さんっ」
「今日も勃ってる」
「なっ、今日もって言うなっ」
それだと俺がエブリデイ勃起男みたいに聞こえるだろ。
こんな風に勃起すんのはあんたらとキスしてる時だけなんだからな。
「前に気持ち良いと勃つって言ってたよね。その時は相手は誰でもいいみたいなこと言ってたけど、それは今でも変わってない?」
「ッ…んな訳、ないでしょ」
あの時はまだ徳川さんに対して好きとかそう言う感情はないと思ってたからそう言っただけだ。
俺が普通に否定したからか、自分から言い出しといて若干驚いたような反応を見せる徳川さんにちょっと呆れた。
さっき本人を目の前にして堂々と好きだって言ってるんだから、今更誤魔化そうとする訳ないだろ。
「貴方達じゃなかったら、全力で拒否ってますよ。逆に貴方達だから、こんな恥ずかしがってるんじゃないですか」
そんくらい分かれよって目で見たら、俺の顔が見えてない筈の尊さんが首の後ろに吸い付いてきた。
確実に痕が付いただろって力で吸われた感覚がしたから、すぐに振り返って何するんだよって言おうとしたんだけど。
「ごめん詩音。いっぱい甘やかしてあげたいけど、もう我慢出来そうにないわ」
「え…?」
「詩音の部屋行こう」
「ッ……」
それが何を意味するのか。
分かってしまったから頷くことが出来なかった。
流石に俺も、そこまでするとは思ってなかったから。
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